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「フォトン・アップコンバージョン」 光の色(波長)を変え、エネルギーを強くする素材

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「フォトン・アップコンバージョン」 光の色(波長)を変え、エネルギーを強くする素材

九州大学は、低いエネルギーの光を高いエネルギーの光に変換し、これまで使えなかった光も利用できるようになる「フォトン・アップコンバージョン」技術の開発に成功したと発表した。

本研究グループは、フォトン・アップコンバージョン技術の実用化に必要な、高効率で、太陽光などの弱い光でも機能する、空気中で安定であるという3つの条件を満たす分子組織体を世界で初めて開発した。

フォトン・アップコンバージョンは、これまで利用できなかった弱いエネルギーの光を利用可能にする技術であり、太陽電池や人工光合成(水素エネルギー製造)の効率を飛躍的に向上するといった、再生可能エネルギー技術への応用が期待されている。

利用できる光の波長範囲が限られていることが課題

これまでの太陽電池では、そのエネルギーの低さから太陽エネルギーの半分を占める近赤外光(可視光領域と赤外光領域の間に位置する800~2500nmの波長領域の光)を有効活用することは容易ではなかった。また、人工光合成(水素エネルギー製造)では可視光を効率よく利用することは難しいとされていた。つまり、従来の太陽光エネルギーの利用技術においては、利用できる光の波長範囲が限られることが大きな問題だった。この問題を解決する可能性があるのが、「フォトン・アップコンバージョン」という革新的なエネルギー創成技術である。

現在、様々なフォトン・アップコンバージョンの機構の中でも、レーザーのような強力な光(非常に強い励起光)を用いず、太陽光程度の弱い光をアップコンバージョンできる三重項-三重項消滅(triplet-triplet annihilation:TTA)を経る機構が注目されており、世界中で研究が行われている。

三重項―三重項消滅機構によるフォトンアップコンバージョン
(エネルギーレベル図)

三重項―三重項消滅機構によるフォトンアップコンバージョン(エネルギーレベル図)

これまでTTAを用いたアップコンバージョンの研究分野では、主にドナー(増感剤)・アクセプター(発光体)分子の拡散を利用してエネルギーを受け渡すメカニズムが用いられてきたが、太陽光のような弱い光でも機能し、空気中で安定、かつ高効率という理想的なメカニズムの構築は困難だった。

新しいアプローチで理想的なアップコンバージョンメカニズムの構築に成功

今回、本研究グループは、分子の自己組織化(複数の分子が自発的に安定な秩序構造を与える現象)を用いるという全く新しいアプローチにより、理想的なアップコンバージョンメカニズムの構築に成功した。この研究成果をもとに、フォトン・アップコンバージョンを示す自己組織化分子システムを世界で初めて開発し、その量子収率は30%と極めて高いことを明らかにした(2つの光子を1つの光子に変換する過程のため、理論上の最大効率は50%)。

効果・今後の展開

今回開発したアップコンバージョン能を有する分子組織体は、高効率で、太陽光程度の弱い光(低励起光強度)でも機能し、空気中でも安定なアップコンバージョン発光を示す理想的なものであり、学術的のみならず産業的にも大きな波及効果をもたらす成果であると説明する。

今回開発した系のアップコンバージョン発光強度の安定性

三重項―三重項消滅機構によるフォトンアップコンバージョン(エネルギーレベル図)

溶存酸素がない場合(青色)と比べ、溶存酸素が存在する空気中(赤色)でもほとんどアップコンバージョン発光は失われない。緑色の光を入射すると、空気中でも青色の発光が明確に観測される。

また、ゲルや薄膜といった様々な形態の材料に展開可能であるため、折り曲げたり伸ばしたりできるフレキシブルなデバイスの基盤材料としても期待される。将来的に近赤外光を可視光に、また可視光を紫外光にと、より大きなエネルギーの光に変換する色素系へと応用すれば、太陽電池や人工光合成の効率を高めるための画期的な方法論になることが期待される。

【参考】
九州大学 - 世界初!低エネルギーの光を高エネルギーの光に変換し再利用可能にする『分子組織化フォトン・アップコンバージョン』技術の開発に成功! (PDF)

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