> > 「塗る太陽電池」、新材料で変換効率+耐久性が向上 メカニズムはまだ不明

「塗る太陽電池」、新材料で変換効率+耐久性が向上 メカニズムはまだ不明

記事を保存
「塗る太陽電池」、新材料で変換効率+耐久性が向上 メカニズムはまだ不明

理化学研究所は、新しい半導体ポリマーを開発し、塗って作る有機薄膜太陽電池(OPV)のエネルギー変換効率と耐久性を同時に向上させることに成功したと発表した。

新しい半導体ポリマーを塗布して作ったOPVのエネルギー変換効率は9%。これはOPVとしては非常に高いエネルギー変換効率で、また実用レベルに近い高い耐久性を示す半導体ポリマーは他に類を見ないという。

現在のところ、新しい半導体ポリマーおよびホール輸送性材料(光活性層と正極との間に積層する材料)を改良したことで耐久性が向上した理由は分かっていない。この知見を基に、耐久性が向上した原因を調査することで、さらに高い変換効率および高い耐久性を示す半導体ポリマーの開発研究、ひいては実用化に向けた研究が加速すると期待される。

半導体ポリマーとは

半導体ポリマーは、半導体の性質を持つポリマー(高分子の有機化合物)材料。可視光を吸収し、有機溶剤に溶けるため、塗ることができる半導体として、有機薄膜太陽電池をはじめとした有機デバイスに応用されている。

有機薄膜太陽電池(OPV)とは

有機半導体を発電層として用いた薄膜太陽電池の総称。OPVは半導体ポリマーを基板に塗布することで作製できるため大面積化が可能。このため、低コストで環境負荷が少ないプロセスで作製でき、現在普及しているシリコン太陽電池にはない軽量で柔軟という特長を持つ次世代太陽電池として注目されている。OPVの実用化には、エネルギー変換効率とともに耐久性を向上させることが大きな課題となっていた。

OPVが劣化する要因として光、熱、酸素、水分などが主なものとしてあげられる。光や酸素、水分による劣化は、紫外線をカットすることや、素子を封止することで大部分抑制することができる。一方で、太陽光があたることによる素子の温度上昇は防ぐことができないため、熱による劣化を抑制するためには、材料(半導体ポリマーやホール輸送性材料、電子輸送性材料)を抜本的に改良する必要があった。

研究概要

20150925_c02.jpg

今回研究チームは、エネルギー変換効率の向上を目指して研究を進め、OPVの変換効率だけでなく、耐久性(耐熱性)も向上させる新しい半導体ポリマー「PTzNTz」を開発した。これは、2014年に開発した半導体ポリマー「PTzBT」に改良を加え、太陽光をより多く吸収するしたものである。

「PTzBT」素子と「PTzNTz」素子を塗布して作製したOPVを比較したところ、エネルギー変換効率が7%から9%まで向上。また、これらの素子の耐久性を評価するため85度に加熱して500時間保存したところ、PTzBT素子では、エネルギー変換効率は初期値の半分以下まで低下したのに対し、PTzNTz素子では500時間経過後のエネルギー変換効率は初期値の約90%と、耐久性(耐熱性)が大きく向上した。さらに、ホール輸送性材料である酸化モリブデン(MoOx)を酸化タングステン(WOx)に変更したPTzNTz素子では、エネルギー変換効率がほとんど変化しなかった。また、耐熱性試験をさらに継続した結果、1,000時間経過後でもエネルギー変換効率は初期値の96%を保持することがわかった。

これは、実用レベルに近い耐久性であると考えられる。研究グループは、「本研究により、OPVは耐久性が低いという従来の認識を覆すことができた」と語っている。

また、耐久性を評価する加速試験には、耐光性試験など他にもいくつかあり、それらもクリアしなければならないが、OPVにとって最もハードルが高い耐熱性試験をクリアできたことは非常に大きな進歩と捉えている。

なお、本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発(ALCA)の技術領域「太陽電池および太陽エネルギー利用システム」、研究開発課題名「高効率ポリマー系太陽電池の開発」の一環として行われた。

【参考】
理化学研究所 - 塗って作れる太陽電池の実用化に大きく前進-新材料開発でエネルギー変換効率と耐久性を同時に向上-

関連セミナー・イベント情報

関連カテゴリ

プレスリリースを受け付けております

環境ビジネスオンラインでは、皆様からの環境に関する情報をお待ちしています。

新製品・新サービス、研究内容、法令情報、イベント・セミナー、海外の環境ビジネス情報など、お気軽にお寄せ下さい。お送り頂いた内容を、編集部にて拝見いたします。

こちらから、必要事項をご記入ください

Copyright © 2012 日本ビジネス出版. All rights reserved.