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廃棄物の輸出入、法制度はどう見直すか? 環境省の有識者会議が報告書

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廃棄物の輸出入、法制度はどう見直すか? 環境省の有識者会議が報告書

環境省の有識者会議は、廃棄物などの不適正輸出等対策の強化や、環境負荷の低減、資源の有効利用に資する国際的な循環資源の輸出入のあり方について検討してきた結果を報告書にとりまとめた。

廃棄物などの越境移動を適正化するためには、それぞれの廃棄物などの性状に応じて、汚染リスクを最小にしつつ、資源活用率を最大にするような管理の方法が必要となる。しかし、この報告書では、日本の制度は、欧州と比較して、既に顕在化しつつある問題に対処しうる根本的な仕組みが欠けていると指摘している。

日本においても、管理の対象となる廃棄物などの範囲を明確化し、その廃棄物などの輸出・輸入をしっかりと管理した上で、廃棄物などの環境リスクに応じた適正な手続の整備を求めている。特に、バーゼル条約担保法である日本の「バーゼル法」と「廃棄物処理法」の規制の適用範囲を適切に接合させることで、両法の間の「すきま」を埋める必要があるとしている。

また、グローバル化が進行し、廃棄物等の越境移動が活発化する中で、資源の循環利用の面からEU等の諸外国との国際競争が激化しているという点も重視する。日本の静脈産業を発展させ、長期的な国益や産業界の利益を確保するためには、環境戦略としてだけでなく、経済戦略としても一刻も早い対応を求めている。

この報告書では、今後の対応策を実現するためには、法制度そのものの見直しが不可欠だ。有識者会議では、日本で顕在化している環境・経済の問題を解決するため、迅速に最大限の対策を講ずることを強く期待すると述べている。

報告書のポイントは以下のとおり。

1.廃棄物等の越境移動管理に関する制度の概要

  • 廃棄物等の越境移動は、バーゼル条約に基づき国際的に規制。
  • 日本は廃棄物処理法とバーゼル法で廃棄物等の越境移動を管理しているが、規制の「すきま」が存在。

2.廃棄物等の越境移動の現状と近年生じている主な問題

(1)使用済家電等の越境移動に伴い懸念される環境汚染

有害物質を含む使用済家電等が混入した金属スクラップ(雑品スクラップ)等が、国内でリサイクルされず、不適正に海外へ流出。有害物による国内外での環境汚染に懸念。しかし、廃棄物該当性の判断が困難であり、取締りに限界。

(2)国内で処理されるべき廃棄物等の海外流出(鉛蓄電池等)

有害物質を含む使用済鉛蓄電池等の海外輸出が進行。この結果、国内の適正なリサイクル処理施設の維持が困難。

日本への輸入ニーズが高い電子部品は手続き時間が長い

日本への輸入ニーズが高い電子部品は手続き時間が長い

(3)バーゼル条約に基づくシップバック等の実施に係る問題

日本から輸出された使用済電気電子機器や雑品スクラップの返送(シップバック)要請が頻発。外国政府との調整が難航するケースも。

(4)電子部品スクラップ等の輸入手続上の問題

金属リサイクル目的の電子部品スクラップの輸入について、日本で手続に時間がかかるため、諸外国に比べて競争条件上の不利。

3.廃棄物等の越境移動に関する基本的考え方等

廃棄物等の潜在的な汚染性と資源性に着目し、前者の顕在化を抑え、後者の顕在化を推進。

4.廃棄物等の越境移動管理の基本的枠組みに関する論点

現行国内法の基本的枠組みと課題

廃棄物処理法とバーゼル法の「すきま」の解消(問題(1)および(2)への対応)については、バーゼル法は輸出入時の水際規制が中心であり、その実効性には限界がある。廃棄物処理法とバーゼル法の「すきま」を埋めることで有害廃棄物等の不適正な越境移動を防止するため、大きく次の2つの方法を検討。

  1. 廃棄物処理法で、使用済家電等のように廃棄物該当性の判断が困難な物に対しても廃棄物処理法の一定の規定を適用することによって、国内での管理を適正化(図の青枠を上に広げる)
  2. バーゼル法で、上流に遡って国内での管理を適正化(図の赤枠を左に広げる)

5.廃棄物等の越境移動に関する個別論点

輸出をめぐる主な論点

  • 取締り現場での迅速な規制対象物認定の実現(問題(1)への対応):
    客観的かつ短時間で規制対象物か否かを判断できる適切な基準を整備することで、取締りの実効性を確保。
  • バーゼル法における国内処理原則の具体化(問題(2)への対応):
    有害物は国内でなるべく処理するとの原則に基づいた輸出審査基準等を整備することで、使用済鉛蓄電池等の国内での継続的・安定的なリサイクル処理を確保。
  • 措置命令等の迅速な実施の確保(問題(3)への対応):
    外国政府からシップバック要請があった場合に迅速に措置命令等を発することができるようにすることで、シップバックの迅速な実施を確保し、外国政府との調整を円滑化。
  • 廃棄物該当性の明確化等を通じた輸出の円滑化:
    輸出に際して廃棄物処理法に基づく手続の要否を迅速に判断できるようにし、事業者負担を軽減。

輸入をめぐる主な論点

  • 我が国に廃棄物等が不法輸入された場合のシップバック手続の整備:
    日本がシップバック要請する場合にも迅速な対応ができるようにし、事業者負担を軽減。
  • 環境汚染等のリスクが低い特定有害廃棄物等の輸入手続の簡素化(問題(4)への対応):
    電子部品スクラップのように、輸入で特段の問題が生じていない特定有害廃棄物等について、輸入手続を簡素化し、諸外国と対等な競争条件を確保。

その他の論点

  • 事前相談制度の見直し: 行政サービスの内容を改善することで、事業者の負担を軽減。
  • 試験研究目的での輸出入手続の整備: 試験研究目的での輸出入を円滑化し、技術開発を支援。

報告書の背景 日本は20年間放置状態!

この報告書の名称は「廃棄物等の越境移動等の適正化に関する検討会報告書」。

廃棄物などの越境移動については、日本は、1992年のバーゼル条約発効を受け、同年に国内担保法である「特定有害廃棄物等の輸出入の規制に関する法律」(バーゼル法)を制定するとともに、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)を改正することで、不適正な輸出入を防止するための手続きを整備するなど、その管理の基本的枠組みを整備した。

近年、天然資源の枯渇やアジア各国の急速な経済成長を背景に、国際的な循環資源の輸出入が活発化している。これに対応し、欧州等ではダイナミックかつ戦略的に国内制度を見直している。しかし、日本はバーゼル法について制定以来20年以上にわたって大きな見直しを行っていない中で、環境・経済をめぐる多くの問題が顕在化している。

そこで、環境省は、廃棄物等の越境移動等の適正化について必要な検討を行うため、有識者で構成される検討会を設置し、2015年9月から2016年3月まで計5回にわたり検討を行い、この度、報告書をとりまとめた。

本報告書では、廃棄物等の越境移動等に関する課題を整理し、現行制度の点検等を行いつつ、(1)廃棄物等の不適正輸出等対策の強化および(2)環境負荷の低減や資源の有効利用に資する循環資源の越境移動の円滑化のあり方について検討を行った結果を整理している。

【参考】
環境省 - 「廃棄物等の越境移動等の適正化に関する検討会報告書」のとりまとめ

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