EV普及で注目の技術V2Gが抱える「5つの課題」(後編)(2ページ目)

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4. V2Gに関する考察

米国の実証結果から、V2Gが小規模なレベルでは、技術的な問題が見られたものの、電力需給の調整力として機能し、系統安定化に貢献できることがわかった。しかし、将来のV2G実用化に関しては、まだ不透明な部分が残っている。

まず、V2Gを商業的に運用するためには、車載蓄電池やV2Gを運用するシステム等の技術開発が進められなければならない。コスト削減も技術開発によって可能となるため、技術開発がV2Gの実用性を高める重要な要因になると考えられる。

次に、実証が小規模で参加者も限られているため、V2Gネットワークをどの程度の規模で実用化できるのか現時点では見えにくい。マイクログリッドレベルであればV2Gは得策になるのかもしれないが、他方で規模の経済が働けば、コスト低下にもつながることが期待される。

今後予想されるEVの取り込みを可能にする規模のV2Gを実現するのであれば、相応のインフラ整備が必要となる。そのためには、長期的な視点に立った計画が必要となるが、不透明な要素が多い中で、長期的な見通しを明確にするのは困難である。

また、V2Gの経済的なメリットについて、肯定的な見方をするには時期尚早に思われる。国防総省の事例のように、費用が便益を上回り経済性が成り立たない可能性も考えられる。参加者を募るための経済的なインセンティブをどのように提供するかも、実用化に向けたシステムを構築する際に、経済性と関連する考慮すべき要因となる。

そして、何より、EV保有者の協力がなければV2Gは成立しない。EV保有者の行動を制限しない、不利益を被らないような仕組みにしなければならない。時間帯別料金制度のような経済的なインセンティブが参加促進に有効であるのは確かだが、住民のV2Gに対する理解を促すことが基本である。住民の理解を深める準備・対応を行い、長期的に参加してもらえるような環境作りが必要である。

日本での今後のEV普及を考えると、V2Gの活用は重要な取り組みである。特に、再エネの主力電源化を目指す社会において、変動型再エネ電源を取り込んでいくために、V2Gの分散型電源としての役割は大いに期待される。

V2Gの実用化に向けて今後どのように技術的・経済的な課題や障壁が解消されていくのか、また、V2Gの実証規模を拡大していくのか、その動向に注視したい。

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