もしも、怪獣の名前を生物の学名に使ったら?(前編)
近年、動植物の新種記載において、有名人や、神話、ポップカルチャーなどに由来する学名をつけるという手法が注目を集めている。この手法は人々の関心を高める上で有効である一方で、分類学における命名規約に照らすと、いくつか複雑な問題が生じる場合がある。
この記事では、具体例として、怪獣キングギドラにちなんで名付けられた環形動物の一種キングギドラシリス(Ramisyllis kingghidorahi)の学名について分類学的な分析を試みる。その上で、これからの分類学において、研究者に求められることは何かを提言したいと思う。
はじめに
学名とは、国際的に定められた規約に基づき、世界共通の名称として生物の分類群に与えられる名称です。たとえば、 人間ならばホモサピエンス(Homo sapiens)という学名がついています。地球上でこれまでに正式に記載された(=学名がついた)種は200万種以上にのぼりますが、実際に存在する種の総数は依然としてわかっていません。