農地の炭素貯留、日本での可能性は? カギは「自主炭素取引市場」
これまで温室効果ガス(GHG)排出源とみなされてきた農業がもつGHG排出量削減にむけたポテンシャル、特に脱炭素に向けた可能性を「カーボンファーミング」(炭素貯留農業)というアプローチで紹介する。(シリーズ「Carbon Farming カーボンニュートラルに向けた農業の可能性」最終回/全4回)。
最終回では、カーボンファーミングの課題や、日本でも進む具体的な取り組み、また、「自主炭素取引市場」におけるカーボンファーミングの可能性などについて探る。(前回はこちらから)
カーボンファーミングにおける課題
現在制定されている国際的な条約・制度では、カーボンファーミングが対象となっていないため、カーボンファーミングにより生成されたクレジットが、自主炭素市場での取引に限定されてしまっている。たとえば、先進国が発展途上国による二酸化炭素排出量削減への取り組みを資金や技術で支援し、達成した排出量削減分を両国で分配ことができる制度であるCDM(クリーン開発メカニズム)では、カーボンファーミングが対象となっていない。そのため、農地炭素貯留を実施しても、認証機関からオフセットの証明書を発行してもらえない状況である。