ブランディング事例
以前私が携わったクライアントのA社様。こちらは、既婚女性に向けたサービスを展開する企業です。当初は、「働くママのためのサービスを行う企業だから、女性に新しい生き方を提案することをブランドのコアにしよう」というのがスタート地点でした。
しかし、ヒアリングを行っていくなかで、誰かの生き方が変わるということは、そのまわりにいるパートナーの人生も変わるということだよね、という見解に変化していきました。
それを踏まえて「誰のためのサービスか」よりも「生き方が変わるサービス」という点を打ち出していこう、という考え方になったのです。それをもとに導き出したのが、「生きるをもっとポジティブに」というものでした。※細部を変更しているため、最終的なものとは異なっています。
このように、ヒアリングしながら市場の動向を見据えてコアを磨くことで、最初の想定とは違っていたとしても、より良いクリエイティブに辿り着くこともできるのです。
どんな会社にも、強みはある
たくさんの企業とやりとりをしていると、「自社の強みが見つからない」というご相談をいただくことが少なくありません。こうしたケースは既成業界の企業に多く見られます。特に、取り扱う商品・サービスの内容で差別化が難しい業界において顕著です。一例として、人材派遣などの人の情報を取り扱う会社が挙げられます。提供するサービスが読んで字のごとく「人」であるため、会社ごとの色を出しにくいというのが理由です。
しかし、どんな会社にも強みはあります。なぜなら同じ人間がふたりとしていないように、同じ会社も世の中にはふたつとないからです。例に挙げた人材業界をケーススタディにしてみると、わかりやすいかと思います。
人材サービスを行うA社、B社、C社の3社について、それぞれ次のような特徴を持っているとしましょう。
A社は「人材紹介までのスピードが速い」、B社は「紹介できる人材のバリエーションが多い」、C社は「顧客理解度が高い」。実際の顧客とのやりとりの場面で、こうした特徴がどう生きてくるのかを考えてみましょう。
例えば、顧客から「~~歳の、こんな方がほしい」というオーダーがあったとします。A社は即座に条件に合う人材を紹介し、B社はオーダーに合致した人材を数多く紹介してくれる。C社はオーダーを踏まえたうえで、「御社にはこんなスタッフはいかがですか?」と提案をする、といった具合でしょうか。
ご覧のとおり、A,B,C各社はそれぞれ特徴に沿ったサービス(ソリューション)を提供しています。強みとは特徴のことで、いわば「他社との違い」です。それぞれ方針や特徴が違えば、顧客に対してプッシュするポイントは違います。
普段の顧客とのコミュニケーションの中で、どんなポイントに魅力を感じて購入・導入いただいているのかを伺ってみるのもいいかもしれません。そうすることで、自社の強みの本質に近づいていくことができます。
一方で、既成業界であっても強みが見つかりやすい場合があります。生産や製造・開発などの、いわゆる技術系企業などがそうです。各社に固有の技術や生産施設があるケースは、それを強みとして捉えてもいいでしょう。
「この会社の強みってなんだろう」
ご相談をいただく企業様と一緒に考え、フレームワークを実施するとき、立ち返るのはこの言葉です。膝を突き合わせてしっかりと話し合うことで見えてきます。「ブランドは作るものではなく、見つけるもの」といえるのかもしれません。