集中連載企画 これからのシン・企業ブランディング戦略

第8回 クリエイティブについて

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企業の経営戦略にも大きな影響を与えるブランディングとクリエイティブについて解説する人気連載。最終回となる今回は、これまでの内容を踏まえて、実際の事例を紹介する。期間限定 特別無料公開中! これまでの連載はこちら

ブランディング事例

以前私が携わったクライアントのA社様。こちらは、既婚女性に向けたサービスを展開する企業です。当初は、「働くママのためのサービスを行う企業だから、女性に新しい生き方を提案することをブランドのコアにしよう」というのがスタート地点でした。

しかし、ヒアリングを行っていくなかで、誰かの生き方が変わるということは、そのまわりにいるパートナーの人生も変わるということだよね、という見解に変化していきました。

それを踏まえて「誰のためのサービスか」よりも「生き方が変わるサービス」という点を打ち出していこう、という考え方になったのです。それをもとに導き出したのが、「生きるをもっとポジティブに」というものでした。※細部を変更しているため、最終的なものとは異なっています。

このように、ヒアリングしながら市場の動向を見据えてコアを磨くことで、最初の想定とは違っていたとしても、より良いクリエイティブに辿り着くこともできるのです。

どんな会社にも、強みはある

たくさんの企業とやりとりをしていると、「自社の強みが見つからない」というご相談をいただくことが少なくありません。こうしたケースは既成業界の企業に多く見られます。特に、取り扱う商品・サービスの内容で差別化が難しい業界において顕著です。一例として、人材派遣などの人の情報を取り扱う会社が挙げられます。提供するサービスが読んで字のごとく「人」であるため、会社ごとの色を出しにくいというのが理由です。

しかし、どんな会社にも強みはあります。なぜなら同じ人間がふたりとしていないように、同じ会社も世の中にはふたつとないからです。例に挙げた人材業界をケーススタディにしてみると、わかりやすいかと思います。

人材サービスを行うA社、B社、C社の3社について、それぞれ次のような特徴を持っているとしましょう。

A社は「人材紹介までのスピードが速い」、B社は「紹介できる人材のバリエーションが多い」、C社は「顧客理解度が高い」。実際の顧客とのやりとりの場面で、こうした特徴がどう生きてくるのかを考えてみましょう。

例えば、顧客から「~~歳の、こんな方がほしい」というオーダーがあったとします。A社は即座に条件に合う人材を紹介し、B社はオーダーに合致した人材を数多く紹介してくれる。C社はオーダーを踏まえたうえで、「御社にはこんなスタッフはいかがですか?」と提案をする、といった具合でしょうか。

ご覧のとおり、A,B,C各社はそれぞれ特徴に沿ったサービス(ソリューション)を提供しています。強みとは特徴のことで、いわば「他社との違い」です。それぞれ方針や特徴が違えば、顧客に対してプッシュするポイントは違います。

普段の顧客とのコミュニケーションの中で、どんなポイントに魅力を感じて購入・導入いただいているのかを伺ってみるのもいいかもしれません。そうすることで、自社の強みの本質に近づいていくことができます。

 一方で、既成業界であっても強みが見つかりやすい場合があります。生産や製造・開発などの、いわゆる技術系企業などがそうです。各社に固有の技術や生産施設があるケースは、それを強みとして捉えてもいいでしょう。

「この会社の強みってなんだろう」

ご相談をいただく企業様と一緒に考え、フレームワークを実施するとき、立ち返るのはこの言葉です。膝を突き合わせてしっかりと話し合うことで見えてきます。「ブランドは作るものではなく、見つけるもの」といえるのかもしれません。

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