集中連載企画 これからのシン・企業ブランディング戦略

第5回 ブランディングの実践 ②外部分析

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企業ブランディング専門の実践家が語る、実践的な具体方法とは。前回は肝となる内部分析について語った内容であるが、今回はもうひとつのフレームワークである外部分析について解説をする。大人気集中連載第5回。期間限定 特別無料公開中! これまでの連載はこちら

PEST分析とその中身

前回の記事では、3Cを用いた内部分析について解説しました。今回はPESTを用いて、外部環境分析を行う方法について解説をします。3Cを応用した内部環境分析で見つけた“現在の強み・優位性”が今後も強い武器となるのか、さらに変化や強化を行うべきかなどを外部環境分析によって検証し、最終的にブランドのコアにふさわしい内容へと煮詰めていきます。

ご存じの方も多いかもしれませんが、PESTについて簡単に説明すると・・・。これは、「Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)」の4つの頭文字を取ったもの。

Pでは法律や法改正、税制、与党政権の方針、ビジネス上関連する国の法制度・政権の考えなどを調査し、この先を予見します。医薬品など規制業種にあたる場合は、MUSTで抑えるべき項目ですが、AIやロボットなどの先端技術は今後どのような法規制が発生しうるのかを対象になる国ごとに整理しておくとよいでしょう。

Eは、経済成長率、物価、消費動向、為替などの動向を見るもので、国内企業でも都市部と地方との経済格差を確認したり、グローバル企業なら、欧米・アジア圏など国ごとに将来の見通しを立てておく必要があります。

Sの社会は人口動態、流行や世論、宗教、倫理観など。このSは立ち位置としては、生活者の感覚や価値観の違いや変化・トレンドを把握する感覚に近いと考えてください。

そして、Tはインフラ、イノベーション、技術開発や実用化の時期など。いわゆる技術系の企業でない場合でも、代替サービスとしてAIの動向を調べておく、また、ビジネスモデルやサービス手法に目をつけて、自社の優位性が昨日するかを分析してみるとよいでしょう。

実は、P E S T分析は経営戦略や新規事業開発を行う初期段階のアクロ分析ツールとして使われることが大半です。しかし、自社の強みをあぶり出す「らしさ重視」ブランディングでは、あえて方向性の検証の段階で使うことにしています。その理由は、企業に内在した価値を発見するブランディングを行う場合は、外部環境分析から入る意味があまりないからです。ブランドはある日、突然、人為的につくりだすことはできず、自社に既にある「よさ」を掘り出すことが大切です。

ただし、自社がよいと思う価値が独りよがりではないか、ある程度、長期レンジで機能できるかを見極めるために、外部環境分析を行い確認していく、と理解してください。また、PESTをはじめとする外部分析の手法はいくかあるので、必ずしもP E S Tにこだわる必要はなく、使い慣れているもの業種にふさわしい分析ツールに置き換えていただいてもよいと思います。

その一方で、ブランディングに絶対解はないことも頭に入れておくとよいでしょう。未来のことは誰にも分からない。それがビジネスです。ただ、どんな未来予測よりも大切なのは、そこで働く人が意志や思いを乗せられるブランドであることです。「このコアでよいのか」。迷った時には、それが、自社の価値観や特性に合っているか。社員や社長の気持ちが盛り上がれるのか、判断軸にしてよいと思います。

どんな環境でも生き残れる企業になるために必要なのは、自分の頭で考えられる集団であること。ブランディングは、そのための旗印をつくることなのです。

では、次回はブランディングの仕上げでもある、「コアを磨く」について解説していきます。

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