集中連載企画 これからのシン・企業ブランディング戦略

第6回 ブランディングの実践 ②外部分析

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ブランディングの成功は企業ブランドのコアを見つけることが成否を左右します。内部分析と外部分析の要点を踏まえて、最後に行うべきは「見つけたコアを磨く」こと。ブランディング実践法の締めくくりとなる大人気集中連載第6回。期間限定 特別無料公開中! これまでの連載はこちら

ブランドのコアを磨く

第4回の記事では内部分析を、第5回の記事では外部分析について解説してきました。このプロセスを経て、ブランドのコアとなる要素がある程度、見えてきた段階で、改めてじっくりと考える時間をとってみましょう。しばらく時間を置いて、そのコアを見つめてみることも大切です。

前回の記事でご説明したように、第一条件としては、そのコア自体が何よりも社員や経営陣が魅力を感じるか、我がことと思えるかが重要です。そして、第二は外部環境と照らし合わせた時に、無理のないもの、短命すぎないものでないかの視点が大切です。

ここまで、クリアした上で、いくつか確認すべきポイントが、一つは経営戦略や理念との整合性です。これは言わずもがなではありますが、ブランディングに慣れていない企業やブランディングと経営を切り離して考えてしまう企業(単なる宣伝のような捉え方)の場合は、やや注意して確認してみることが必要です。

また、外部環境分析で代替はできるものの、見落としがちなポイントが、そのコアにした時点で将来のマーケットを狭めてしまわないか?という観点も大切です。これはスタートアップやベンチャーなど、まだ大きな市場を確保していない企業にありがちです。

例えば、魅力的なフェムテック商材を持つ企業の場合だと、ついつい「女性のための・・」などの定義を用いがちです。どれほどジェンダーレスな社会になっても、生物としての性差はつきまとうのですから、フェムテック企業が「女性のための」企業と定義してもなんら間違いではありません。

ただ、ここで気をつけてほしいのが、何年先まで女性のための企業であり続けるのか、という点です。少なくとも10-20年は、事業ドメインを変えないのなら良いのですが、仮に5年後に性別関係のないヘルステック商材を開発するとしたら、一度、作り上げたブランドがあまり意味を成さなくなってしまいます。このように特定の性別や年齢など、サービスの対象を区切ることをブランドコアに入れていく場合は、その表現が自社の将来の事業を制限しないのか。あえて特化することで、独自性を強められたり意志を込められる、と考えるのか、戦略的な意思決定が必要になります。

また、ブランディングコアを検証する上で、もう一つ大切な観点が、耐用年数です。どの期間までを射程範囲に入れてブランドを構築すればよいのか。これは、実際、お客さまからもよく質問されるポイントです。本当に、ここにも正解はないのです。しかし、いくつか考える軸があるのでご紹介させていただきます。

まず、大手企業の場合です。大手企業がブランディングを変更する場合は、かなりしっかりとした戦略的理由があります。一例としては、ビール会社が健康食品まで扱う企業になるため、ブランディングを変更すると考えるケース。この場合、ある程度ロングレンジで通用するものを望んでいると考えていいでしょう。

一方で、中堅中小企業の場合は、どうでしょうか。一概には言えないものの、食品やインフラ、必要不可欠な工業部品を扱っているなどやや変化の少ない業種では、15-20年程度の耐用年数を意識してブランドを開発していくとよいでしょう。反対に、スタートアップや変化の激しいテック企業やネット系サービス企業などは、最長でも10年ぐらいの視野感で機能するブランド開発と腹を括らないと、なかなかGoサインが出せないかもしれません。

ブランドの寿命の長さは、その会社の変化スピードの速さに呼応します。新たなテクノロジーやビジネスモデルが生まれやすい経営環境であれば、あまり長期レンジでブランドを使おうと思うと「どこでも言える一般論」になりかねません。ブランドを構築する作業は、このような、せめぎ合いの連続。その中で、自分たちなりの“納得解“を見つけることが大切ですし、だからこそ、多彩な経験があるプロフェッショナルのサポートも有用なのです。

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