環境用語集 N-1電制

N-1電制とは

送変電設備で故障が発生した場合に、緊急時用に空けておいた容量の一部に加えて、リレーシステムで各発電所から送電線への接続を瞬時に制限することで、運用容量を拡大する手法をいう。再エネの導入拡大に向け、既設送電線を有効活用し流通設備効率の向上を目指す「日本版コネクト&マネージ(C&M)」での取り組みのひとつとして採用されている。

従来の送電線の運用方法は、太陽光発電や風力発電、火力発電などの接続電源が最大出力となった場合でも送電できる容量を確保するとともに、送電線1回線が故障した場合などの緊急時でも、他の送電線で電気を供給できるよう、原則として1回線分(50%)の容量を緊急時用として確保するものだった。

これに対しN-1電制は、送電線の最大容量(2回線分)を上限に送電線への電源接続を認める一方、送電線の事故が発生した場合には、1回線分の容量まで電源を制限することで、既設の送電設備を最大限活用しながら電源の接続可能量を拡大するしくみをいう。

N-1電制を適用することで効率的な設備形成が図れる。一方で、送電線等の単一設備故障時に電源を遮断することによる長期的な供給力確保や需給バランスへの影響が懸念される。

このため、電源の系統アクセスにおける送変電設備の設備形成の基本的な考え方で、N-1電制の適用は、供給信頼度面への影響を十分に考慮すること、また信頼度の観点から、N-1電制が適用可能な系統ではその適用を前提としつつ、N-1電制に伴う遮断(または抑制)による影響が大きい電源についてはN-1電制での対応を行わず、設備増強を前提とした合理的な設備形成が求められるとしている。

2018年10月、N-1電制先行適用 「系統に接続したい電源向け」だけに開始

系統にトラブルがあった際は売電できなくなる可能性がある同制度は、太陽光発電システムが急速に普及する一方で系統容量の上限に達することによる接続制限が問題視されていた頃、2018年10月に「N-1電制の適用を前提とし接続する新規電源」を対象に開始された。

2022年7月、N-1電制本格適用 「既設電源を含む全ての電源」が対象に

2022年7月以降、これまで「新たに接続する際にN-1電制での制限に同意した電源」のみに限定されていた同制度は、「全ての特別高圧系統へ接続する電源」を対象とすることになった。これにより2022年現在、全ての特別高圧系統へ接続する電源は、送変電設備で故障が発生した場合には送電線への接続が制限され、売電できなくなる可能性がある。

N-1電制の優先順位、系統設備の効率を考慮して一般送配電事業者が決める

制限される電源は緊急性の観点から以下のような優先順位に基づき、一般送配電事業者が発電機の出力変化速度、調整容量等を考慮して、電力系統の復旧に最も適切と考えられる電源を選定する。

  1. 潮流の抑制効果が大きい(電制台数を削減できる、抑制量を適正にできる 等)
  2. 電制後の再起動時間が短い
  3. 機会損失費用が少ない(発電単価が高い、起動費が安い 等)
  4. 電制装置の設置費用が安い(通信回線費用が安い 等)
優先順位による電制対象選定のイメージ画像
具体的には電制対象電源の「地点」、「大きさ」、「系統混雑時の混雑見通し」などの観点が考慮されて順位が決まる(OCCTO「流通設備の整備計画の策定におけるN-1電制の考え方について」より)

発電事業者は正当な理由がない限り、自動的に系統への接続を遮断する「電制装置」の設置を拒否することができない。この場合の正当な理由とは「発電機の廃止を直近に予定している」、「老朽化により現状の制御装置では電制設置に伴う改造が不可(制御装置更新にあわせて電制装置の設置を協議)」などのきわめて特殊な場合だけで、たとえば電制に伴う設備損壊の懸念や利水者への影響、熱供給などその他事業等への影響などでは電制装置の設置を拒否できない。

同制度については、N-1電制の本格適用開始に伴ってOCCTO(電力広域的運営推進機関)が2022年7月5月に全般的に見直し公開した「流通設備の整備計画の策定におけるN-1電制の考え方について」というドキュメントが詳しい。

N-1電制に関連するその他の情報・ニュース