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国連が高い評価、インド発『持続可能』なファッションブランド(2ページ目)

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偏見に立ち向かう

I was a Sariが誕生したきっかけは、創業者のステファノ・フナーリ氏が、ムンバイで開かれていたフリーマーケットに立ち寄ったことだった。そこには、様々な色や模様、生地のサリーが積み重ね られていた。

インドでは伝統的に、女性の立場が弱く、男性に比べて教育や就業の機会が与えられない。貧困層や地方では今でも、こうした傾向が強い。フナーリ氏は、サリーを眺めながら、これらを利用して女性に洋服を作らせ、販売させることで、 収入を与え、経済的に自立させることを発案。2013年、ムンバイでブランドを立ち上げた。

前出のグッチのほか、イタリアのミラノ工科大学デザイン学部のデザイナーらや、女性の自立を支援する地元のNGOの協力を得て、恵まれない女性を集め、サリーから洋服をつくるトレーニングを提供。女性らは、職人になることを目指して訓練に励んだ。

インドでは、「アーリ」と呼ばれる高いレベルの刺繍は、直感と優れた能力が求められるため女性には難しいとされており、男性が雇われることが多いという。I was a Sariで働く女性らは、この難しい技術を習得してみせることで、こうした偏見に立ち向かってきた。

女性らは仕事を通じて、良い変化を遂げている。ルクサーという女性は、安定した収入のない夫に代わって子供の授業料を支払い、学校に行かせることができるようになった。ヴィーナという女性は、収入を得ることで自分に自信を持つようになり、起業を目指し始めたという。

国連の会合で作品を披露

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サリーで作られた洋服(ラクメ ・ファッション・ウィークにて)

I was a Sariへの注目度は高まり続けている。2019年、国連環境計画(UNEP)などが設立し、プラスチックなどの廃棄物で革新的なアイテムを制作したデザイナーに贈られる「サーキュラー・デザイン・チャレンジ」賞を受賞。I was a Sariは、インド国内から寄せられた900を超える応募の中から、見事栄冠を手にした。

さらに、インドの化粧品大手主催の「ラクメ ・ファッション・ウィーク(LFW)」や、 ケニアのナイロビで開催されたUNEP第4回国連環境総会(UNEA4)に招待され、サリーのほか、車のシートベルトなどの廃材で作った洋服や靴を披露した。「持続可能なファッション」として評価されたためだ。

フナーリ氏は、着物から洋服をつくる「I was a Kimono」など、サリー以外の素材を活用して同様のソーシャルビジネスを展開することも視野に入れている。I was a Sariのウェブサイトはwww.iwasasari.com、 インスタグラムはwww.instagram.com/i_was_a_sari/。日本では、オンラインでのみ販売している。

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