二国間クレジット制度(JCM)

二国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)とは、日本の優れた脱炭素技術や製品、システム、サービス、インフラなどをパートナー国に提供し、現地で実現した温室効果ガス(GHG)排出削減・吸収への日本の貢献を定量的に評価してクレジットを発行する国際的な仕組みである。獲得したクレジットは、日本の温室効果ガス削減目標(NDC)の達成に活用される。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のパリ協定第6条2項に合致する「協力的アプローチ」として運用されている。
国際枠組みと法的根拠
JCMは、パリ協定第6条2項に基づく「国際的に移転される緩和成果(ITMOs)」を創出する枠組みとして位置づけられている。日本政府は2025年3月、JCM全体を協力的アプローチとして包括的に承認した。パートナー国との間で二重計上を防止するための「相当調整(Corresponding Adjustment)」を行うことで、国際的な整合性を保っている。
国内においては、地球温暖化対策推進法の改正によって実施手続きが法的に位置づけられた。主務省庁である環境省、経済産業省、外務省、農林水産省などの連携のもと、指定実施機関であるJCM Agency(JCMA:公益財団法人地球環境センター内)が制度運営やプロジェクト登録、審査手続きの実務を担っている。
パートナー国と削減目標
日本はアジアやアフリカ、中南米、中東などのグローバルサウス諸国を中心に二国間文書(MOC)の署名を進めており、2026年4月のオマーンとの署名によりパートナー国は32カ国に拡大した。政府の地球温暖化対策計画では、官民連携によってJCMを通じた削減・吸収量を「2030年度までに累積1億t-CO2程度、2040年度までに累積2億t-CO2程度」確保することを目標に掲げている。
| 地域 | 対象国(計32カ国) |
|---|---|
| アジア | モンゴル、バングラデシュ、モルディブ、ベトナム、ラオス、インドネシア、カンボジア、ミャンマー、タイ、フィリピン、スリランカ、インド |
| アフリカ | エチオピア、ケニア、セネガル、チュニジア、タンザニア |
| 中南米・大洋州 | コスタリカ、パラオ、メキシコ、チリ、パプアニューギニア |
| 中東・欧州・中央アジア | サウジアラビア、アゼルバイジャン、モルドバ、ジョージア、ウズベキスタン、アラブ首長国連邦(UAE)、キルギス、カザフスタン、ウクライナ、オマーン |
民間主導JCMの加速と対象分野の拡大
制度発足当初は政府補助金を活用した設備導入事業が主流であったが、近年は企業の自己資金投資によりクレジットを獲得・配分する「民間主導JCM」の推進が加速している。事業組成ガイダンスや適用基準の整備により、企業の予見性が高められている。
プロジェクトの対象技術も多様化しており、産業分野の省エネルギーや再生可能エネルギー設備のほか、水田の間断かんがい技術(AWD)によるメタン排出削減、バイオ炭農地施用、CCS、森林保全(REDD+)といった幅広い分野で案件形成が進んでいる。自治体と民間企業が連携して途上国の都市へ脱炭素技術を展開する都市間連携事業の支援施策など、案件発掘・形成を後押しする仕組みも整備されている。
企業実務におけるクレジットの活用方法
企業がJCMを通じて取得したクレジットは、自社の脱炭素経営や制度対応において多角的に活用できる。国内の排出量取引制度であるGX-ETSにおいて排出枠不足を補填するオフセット手段として認められているほか、地球温暖化対策推進法に基づく温対法SHK制度(算定・報告・公表制度)においても活用可能である。
温対法に基づく報告実務では、電力の排出係数更新に関する動向にも留意が必要である。J-クレジットやJCMクレジットは電力の基礎排出係数には算入されず、調整後排出係数を算定する際の控除対象として扱われる。これにより、事業者は海外投資を通じて創出した排出削減貢献を国内の報告実績に反映させることができる。
参考
- 環境省 ― 二国間クレジット制度(JCM)について
- 経済産業省 ― JCM(二国間クレジット制度)
- 外務省 ― 二国間クレジット制度(JCM)
- 公益財団法人地球環境センター(JCMA) ― JCM 日本政府指定JCM実施機構
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