> コラム > 初期から稼動しているソーラーシェアリングは今どうなっているのか?
再エネで拓く農業ビジネス

初期から稼動しているソーラーシェアリングは今どうなっているのか?

 印刷 記事を保存

スタンダード会員登録 のあとに ログイン していただくと全文をご覧いただけます。

FIT価格の低下により再エネ事業での「新しい収益の上げかた」を模索している方も多いだろう。農業分野はそのなかでも再エネ導入のポテンシャルが大きいといえる。本連載では、農業と再エネのドッキングにより生まれうるビジネスチャンスについて、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の実践者である馬上丈司氏に解説いただく。

第1回は、すでに複数年稼働しているソーラーシェアリングの現状をご紹介いただく。

連載にあたって

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の農地の一時転用許可による設置が2013年に認められてから、これまでに累計で1,500件以上の設備が全国に導入されてきた。

2018年5月に、一時転用許可期間が条件付きで10年以内になる制度改正が行われるまでは、ソーラーシェアリング事業を継続するにあたって3年に一度の再許可を受けることがすべての事業において必要とされていたが、すでに一時転用許可が認められるようになってから5年以上が経過しており、この再許可を受けた事例も積み重なってきている。

今回は、再許可に至るような設備にはどのような事例があるのかを、ソーラーシェアリングのこれまでを振り返りながら紹介していく。

再許可を受けた案件とはどのようなものか?

これまでに再許可を受けている案件は、主に2013~2015年頃に許可を受けた案件である。この頃は、まだ今ほどにはメガソーラー級のソーラーシェアリング設備は多くなく、いわゆる低圧、50kW未満のものが大多数であった。遮光率は20~40%程度、設置場所としては畑や水田など幅広い農地に導入されており、設備としては70~100W程度の出力のスリムタイプモジュールを単管パイプを使った架台に設置する方式が多くみられた。

長期的に、どのような作物がよいのか?

設備下で栽培される農作物ではさまざまな試行錯誤が行われてきており、米・麦・大豆といった穀物類から、葉物野菜や根菜類、ブルーベリーなどの果樹まで現在と同じような多様性がみられる。

これらの設備が導入された当時は、作物がモジュールの下でどのように育つのか、育てられるのかといった情報がほとんどなかった時期にスタートしているので、遮光率にも余裕を持たせているものが多く見受けられ、真っ当に農業に取り組んでいれば収穫量について問題を抱えている事例は少ない印象である。

一方で、情報がないなかでの取り組みであるがゆえに、選んだ農作物が思ったように設備下で生育せず、事後に設備を改修することになったといった事例も見受けられる。

長期的に運営できている事業者にはどんな人が多いのか?

事業主体としては、農地の活用を図りたい、あるいは農業を親世代から承継するにあたって新たな要素を取り入れたいといった農業者の方や、現在と同じように農業への新規参入を図る企業が導入する例もあったようである。

この場合は、営農者=発電事業者の単独スキームが多い。一方で筆者が千葉エコ・エネルギーとして匝瑳市飯塚地区で取り組んでいる事例では、ほとんどの農地が借地であり、そのうえで地区全体のソーラーシェアリング設備下での農業を担う農業法人を設立し、各々の発電事業者が設備を導入していくかたちをとったが、これはソーラーシェアリング普及初期としては珍しいスキームだと考えている。

なお、2018年5月の営農型発電に関する制度改正によって、営農者が「担い手」である場合や、荒廃農地を再生したソーラーシェアリングなどの場合は一時転用許可期間が10年以内となるが、初期の案件でもこの要件を満たしていれば更新の際に許可期間が延長される。

匝瑳市飯塚地区のスキームの場合は、営農者が認定農業者であるため、この要件を満たしたことで更新時に許可期間が10年となった。

図 千葉エコの1号機も、2018年に再許可を受けて10年許可となった

図 千葉エコの1号機も、2018年に再許可を受けて10年許可となった

また、一時転用許可が認められるようになった当初は、「簡易に撤去できる構造であること」というルールが厳密に適用され、基礎部分では地上設置型で主流となっているスクリュー杭や、当時多かったコンクリートの布基礎などが認められず、架台構造を含めて単管パイプによる施工が多くみられる。スクリュー杭による施工が認められ始めると、雪国用のアレイ型で支柱を長くした構造の設計がみられるようになった。

資金調達・収益はどうか?

資金調達のハードルは現在よりもっと高く、発電事業者の与信力によって地銀などから調達したり、農業も含めた融資に取り組める日本政策金融公庫からの融資を受けたりといった事例があるが、当時は金融機関がソーラーシェアリングに融資を行うだけでニュースになっていたこともあるくらい珍しいものであった。農業者自身で取り組む事例では、低圧規模だと全額自己資金での設備導入というケースもあったようである。

収益性の面では、2013~2015年であればFITはほぼ32円以上であるから、よほど高コストな設備になっていなければ、収支は調達価格等算定委員会での目標収益水準は超えていると推測される。

現在は、2013~2015年頃よりもはるかに多くのソーラーシェアリングが計画され、最近では特高規模の事業も珍しくなくなってきた。農業と共存する設備設計のブラッシュアップも進み、最近ではアルミやスチール架台を用いることが一般化し、ファイナンスについても選択肢が増えてきたというのが実感である。

普及初期の事例から学びを

ソーラーシェアリングの取り組みが本格化した当初の事業では、農業と発電事業のバランスを図るためにさまざまな工夫・試行錯誤が行われているので、その事例から学ぶことでさらなる広がりを得ることができるのではないだろうか。

スタンダード会員の方はここからログイン

この記事の著者

 印刷 記事を保存

関連セミナー・イベント情報

関連カテゴリ

Copyright © 2019 日本ビジネス出版. All rights reserved.