特別インタビュー

「再エネは地域とともにある」金融と技術が事業を支える(2ページ目)

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プロジェクトファイナンスで営農型発電事業を実現

全国各地に40の発電所を持つリニューアブル・ジャパン。「発電所の管理は地域で行うのが、我々の方針です。現在、10の地域事務所を持ちますが、2019年には15に増やします」(眞邉氏)。

こうした地域とのコミットメントがあることで実現したのが、岩手県一関市での営農型発電所。資金調達が困難とされる営農型発電において、東北銀行からプロジェクトファイナンスの手法による融資を受け、2018年7月に完成した。

同発電所は、再生可能エネルギーを積極的に導入する一関市、藤沢農業振興公社、営農者、地権者、関係各社との協議を経て実現した。発電所を設置した農地では、麦の栽培と太陽光発電を両立。発電事業収入の一部を20年間にわたり営農支援費用にあてることで、地域創生に貢献する。

岩手県一関市に開設した営農型大規模太陽光発電所。パネルの下では、2019年春から麦が栽培される
岩手県一関市に開設した営農型大規模太陽光発電所。2018年11月より麦を栽培

リニューアブル・ジャパン 執行役員投資管理部長の原尚美氏は「正直、資金調達には大変苦労しました。最終的に東北銀行様から『地域の金融機関として参画する』という意志決定をいただき、プロジェクト実現に至りました。東北銀行様がリスクを整理して踏み込んでくださったことはありがたいですし、全国的に見ても、画期的なプロジェクトになったと思います」と話す。

太陽光発電にとって、日当たりが良く平らな土地である農地はポテンシャルが高い。一方で、人口が減少する地方では、農業のなり手がなく、農地として利用されないまま放置されている土地が多くある。営農型発電は、太陽光発電の拡大と農業再構築の両面で、解決策のひとつとなり得る。

「営農型発電の相談を受ける場合、営農の継続に懸念がある案件が多数です。そもそも営農の主体がないところからのスタートとなるため、当社では営農の仕組みをゼロから再構築する部分も引き受けています。太陽光だけでなく、農業の部分のビジネス構築も含め、地域創生ができる仕組みづくりに、今後も積極的に取り組んでいきます」(原氏)。

インフラ事業者としての覚悟

同社は2023年までに、自社開発1ギガ、ほかの物件1ギガで計2ギガの太陽光発電所を金融商品として持つことを当面の目標として掲げる。

2017年3月には子会社である日本再生可能エネルギーインフラ投資法人が上場。8月には、東急不動産と再生可能エネルギー事業領域において資本提携し、新たなファンドも構築している。発電所の出口、資金を再調達できる仕組みはできあがっている。「デベロッパーで金融を出口とし、自社で技術を持っている。開発、金融、技術の3輪のモデルは海外のデベロッパーでは普通です。当社は、デベロッパーですが、金融と技術に支えられています」(眞邉氏)。

FIT価格は下がり、国内における再生可能エネルギーの事業環境は容易とはいえない。しかし、エネルギー事業を行う者には、インフラとしての電気を当たり前に供給し続ける義務がある。そこには、FITや事業環境に左右されない、インフラ事業者としての覚悟がある。

「CSRは経営である」との信念を持つ同社は、事業のなかに地域との協働・地域への貢献の視点がある。太陽光発電事業者は地域に欠かせないインフラ事業者であり、地域の持続的な発展、すなわちサステナビリティに貢献すべきであるとの認識も持つ。

市場は日本だけではなく、世界にも大きく広がっている。「日本のクオリティ、技術、フィロソフィーを世界へも輸出していきたい」(眞邉氏)。人々が使う電気を環境に優しいモノに変えていく。日本の再生可能エネルギーを引っ張り、この分野で日本が世界でリーダーシップを取っていけるようにすること。これが、リニューアブル・ジャパンの大きな使命だ。

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