注目の環境分野 政策・動向分析

ファクトリーイノベーションで日本の製造業に変革を(後編)

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ヤマハ発動機のオール電化塗装ライン(出所:ヤマハ発動機)

日本の官民が製造業においてDX・GXを推進する「ファクトリーイノベーション」の実現を急いでいる。日本の製造業は人材・設備面において生産効率が低いとされ、ものづくり現場の変革は急務。ファクトリーイノベーションをテーマにした展示会の開催も相次ぐ。 前編 のイノベーション政策解説に続き、後編は企業の具体的な取り組み事例を紹介する。

 

具体的なファクトリーイノベーション事例

・ヤマハ発動機のオール電化塗装ライン

ヤマハ発動機(静岡県磐田市)は化石燃料を使用せず、オール電化を実現したカーボンニュートラル対応の量産塗装ラインを本社工場内に新設し、2025年2月20日に二輪車用燃料タンクの製品塗装を始めた。

これまでヤマハ発動機で使っていた塗装ラインは塗料や液体の加温、塗装ブースの加温・加湿、焼付・乾燥などの工程で化石燃料を使っていた。今回新設した塗装ラインでは、塗料メーカーとの低温対応塗料の共同開発、新たな断熱・給気リサイクル技術などを組み合わせてオール電化仕様とした。

ヤマハ発動機による新たな塗装ラインの完成セレモニー(出所:ヤマハ発動機)

 

・日立製作所大みか事業所のグリーンネットワーク

日立製作所(東京都千代田区)は事業成長と環境負荷低減の両立に向け、同社大みか事業所(茨城県日立市)で脱炭素支援ネットワーク「大みかグリーンネットワーク」に取り組んでいる。大みか事業所でカーボンニュートラルに関する各種実証に取り組み、脱炭素化に貢献できる技術やノウハウの実装を目指す。

情報制御システムの製造・開発拠点である大みか事業所は、生産管理やエネルギー管理となどに関する「工場経営DX」に続き、「環境経営GX」の取り組みを始めた。事業所内で脱炭素に関する実証を行い、脱炭素に関わる技術やノウハウを蓄積している。

大みか事業所では具体的成果が出始めている。省エネの強化とCO2排出量削減に取り組み、電力センサーの情報を環境情報管理システム「EcoAssist-Enterprise」に集約・見える化。電力需要の予測のほか、太陽光発電・蓄電池による再生可能エネルギーの活用、生産計画の連動によるピーク電力の抑制などに取り組んでいる。

その結果、2024年度には事業所内排出量におけるカーボンニュートラルを達成。日立製作所全体では、2030年度までに自社の事業所におけるカーボンニュートラルを目指す。

日立製作所大みか事業所では脱炭素に向けた取り組みが進んでいる(日立製作所ユーチューブより)

・RYODENの生産設備向け一元管理システム

FAシステムなどを手掛けるRYODEN(東京都豊島区)は、2025年1月22日~24日、東京ビッグサイトで開催された展示会「Factory Innovation Week 2025」の「第9回スマート工場EXPO」に出展した。「スマートファクトリー 始めるときも、進めるときも、RYODEN」をテーマに掲げ、スマートファクトリー化に向けた課題を模索している顧客、現在のシステムを進化させたい顧客も含め、予知保全から出荷管理、プロ人材の派遣まで様々な最適な製品やサービスを提供する。

RYODENが想定するのは、以下のような製品やシステムだ。

・省エネ・省力化を実現するデータの可視化・分析・制御システム

・生産現場の安全性向上、生産効率改善、トレーサビリティ構築を実現するシステム

・制御システムのサイバーセキュリティ対策

・製造工程の多種多様なデータを監視・制御・分析

・製造業に豊富な経験を持つ専門人材の紹介

・膨大なマニュアルの中から必要な情報に迅速にアプローチしたい現場責任者を対象にした教育・指導など

RYODENの生産設備向けの一元管理システムの概略図(出所:RYODEN)

 

・川崎重工業の工場向けDXツール

川崎重工業(東京都港区)も、工業用のゴム・プラスチック製品などを扱う専門商社、ニシヤマ(東京都大田区)と合同で「Factory Innovation Week 2025」に出展した。

 

会場で展示されたシステム「mapxus Driven by Kawasaki」は、屋内空間デジタルマップとWi-Fiによる屋内測位技術を利用した位置情報サービスの供給によって、工場の効率化につながる空間DXソリューションを提供するシステム。mapxus Driven by Kawasaki の工場向けDXツールとしての活用事例などに加え、Wi-Fiの測位技術を用いて会場内の現在位置を表示するデモを実施した。

川崎重工とニシヤマによる Factory Innovation Week 2025の展示ブース(出所:川崎重工)

ファクトリーイノベーション関連の展示会、2025年に相次ぎ開催

日本のモノづくりや技術革新を形成するためのファクトリーイノベーションに関する行政や企業の関心は高く、2025年1月に開催された「Factory Innovation Week 2025」以外に、2025年は以下のような展示会も予定されている。展示会が相次ぐ今こそ、製造現場にイノベーションを起こすチャンスだと言えるだろう。

・[関西] Factory Innovation Week 2025(5月14~16日、大阪・インテックス大阪)

・Factory Innovation Week [秋] 2025(2025年9月17~19日、千葉・幕張メッセ)

・[名古屋]Factory Innovation Week 2025(2025年10月29~31日、愛知・ポートメッセなごや)

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