
日本の官民が製造業においてDX・GXを推進する「ファクトリーイノベーション」の実現を急いでいる。日本の製造業は人材・設備面において生産効率が低いとされ、ものづくり現場の変革は急務となる。イノベーションのポイントを解説するとともに、先進企業の取り組みやイノベーションにつながる製品を紹介する。前編は政府の政策動向を分析する。
経産省:イノベーション実現のための政策の方向性
経済産業省は2024年6月、産業構造審議会の産業技術環境分科会イノベーション小委員会で、日本の製造業などにおけるイノベーション戦略の方向性をまとめた。特にポテンシャルが高い分野として、脱炭素、循環経済など環境分野に関わるGXと生成AIの活用、技術力の高いスタートアップの育成と支援を挙げた。

研究開発投資、他地域から大幅遅れ
経産省も指摘する通り、現在の日本は製造業などの分野でイノベーションが進んでいるとは言えない。科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の「科学技術指標2023」によると、官民研究開発投資の総額は2007年が19兆円、2021年が20兆円とほぼ横ばいである。OECD資料などに基づく経産省の分析では、研究開発効率も大きく低下しているとされ、中国や米国、欧州など他地域と比べ大幅に遅れを取っている。今後研究開発の質を向上させ、あらゆる分野の需要を創出するためには、製造現場でのイノベーションは不可欠になる。

人材、技術、設備への投資と流動化
イノベーション創出のためには何か必要か。経産省が重要視しているのが国内における研究開発投資の拡充、つまり人材、技術、設備といったイノベーション資源への投資である。こうした資源を生かすためには、大企業とスタートアップでこれらの資源の流動化、相互作用を図り、まず新たな価値、イノベーションを生み出せる環境を整えることが必要になる。

研究開発に関する税制優遇を検討
政府はイノベーション創出に向け、スタートアップと大企業による研究開発投資の促進や研究開発にかかわる税制優遇措置などを検討している。投資効率を可視化して効果的な投資が実現できるように企業の投資を促し、研究開発プロジェクトの支援枠組を強化する。民間企業側としては、こうした政府の動きに呼応し、ものづくり現場におけるイノベーションを効果的かつ迅速に実現できるが成長のカギになる。
後編 ではいち早く製造現場のイノベーションに乗り出している企業の事例を中心に紹介する。
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