環境用語集 燃料電池

燃料電池とは:その種類と仕組み

水素(燃料)と酸素(酸化剤)の化学反応により、電気と熱を発生させる電池。燃料と酸化剤を供給し続けることで、継続的に電力を取り出すことができる。燃料電池は、用いる電解質の種類により、主に以下の5種類に分けられる。

燃料電池の種類と特徴

固体高分子型燃料電池(PEFC)

電解質に固体高分子膜を用いる。 動作温度70~90℃、発電効率33~44%。触媒に白金を用いるため、コストダウンが難しいが、白金の代替触媒として、コバルトやニッケルなどを使用した燃料電池の研究もすすめられている。家庭用・自動車用・携帯用など、小型用途に適している。家庭用燃料電池「エネファーム」はこのタイプの燃料電池を使っている。

アルカリ電解質型燃料電池(AFC)

電解質にアルカリ性水溶液を用い、燃料には高純度の水素を使用する燃料電池。 動作温度20~150℃、発電効率70%以上。セル構造が単純なため小型化が可能だが、コストが高く、燃料と空気に含まれる二酸化炭素を除去する必要があるため、主にスペースシャトル、潜水艦などの特殊用途として使用されている。

リン酸型燃料電池(PAFC)

電解質にリン酸水溶液を用いる。 動作温度200℃、発電効率35~46%。実用化されているのは100kW程度の製品で、主に工場やビル向けのコジェネレーションシステムとして利用されている。

溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)

電解質に溶融炭酸塩を用いる。 動作温度650~700℃、発電効率44~66%。発電効率が高いのが特徴。また動作温度が高いため、排熱の利用にも効果的である。触媒に白金を用いないため、低コストで製造でき、水素の他に都市ガスや天然ガスなど、様々なガスを利用できる点もメリットとして挙げられる。発電所等の大規模用途に適している。現在、中部電力などに商用電源として設置されている。

固体酸化物型燃料電池(SOFC)

電解質にセラミックを用いる。 動作温度700~1000℃、発電効率が44~72%。現在、燃料電池の中で最も発電効率が高いとされている。触媒に白金を使用しないため、低コスト化が可能。動作温度が高いため、排熱の利用にも効果的である。また、家庭用電源から発電用の大規模なものまで対応できる。 一方で、予熱が必要なため起動時間が長い、体積当たりの出力密度が低い、といった欠点もある。

種類 固体高分子型
(PEFC)
リン酸型
(PAFC)
溶融炭酸塩型
(MCFC)
固体酸化物型
(SOFC)
アルカリ型
(AFC)
電解質 陽イオン交換膜
(フッ素樹脂系)
リン酸 リチウム・カリウム炭酸塩、
リチウム・ナトリウム炭酸塩
安定化ジルコニア 水酸化カリウム水溶液
媒体イオン H+ CO32- O2- OH-
使用可能燃料 天然ガス、LPG、石油、メタノール、石炭ガス 純水素
最高作動温度 約100℃ 約220℃ 約700℃ 約1000℃ 約80℃
発電効率(LHV) 33~44% 39~46% 44~66% 44~72% 70%(純水素の場合)
主な用途 小規模発電、分散型電源、輸送用電源 コージェネ、分散型電源 火力代替、コージェネ、分散型電源 小規模発電、分散型電源、火力代替 宇宙開発
利点 小型化・軽量化が容易 COを発電に利用できる
内部改質・排熱利用が可能
COを発電に利用できる
内部改質・排熱利用が可能
腐食が少ない
欠点 CO含有率の制限が厳しい、
白金触媒のため高価
参入企業 パナソニック、ENEOS セルテック、東芝燃料電池システム、トヨタ自動車、アイシン精機 富士電機、東芝燃料電池システム 日本燃料電池、IHI 日本ガイシ、京セラ、ガスター、リンナイ、新日本石油、TOTO、トヨタ自動車、アイシン精機

家庭用の燃料電池に関しては、高価格であることから、導入にあたり国や自治体から補助金の交付が行われている。詳細は下記を参照。

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