環境用語集 LED照明

LED照明
 ・震災後の節電対策としてLED照明市場は急成長
 ・復興支援・住宅エコポイントでもLED照明の普及を後押し
 ・導入が着々と進む一方、残された課題も

LED照明とは

LED照明とは、電気を流すと発光する半導体の一種「LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)」を光源とする照明。「長寿命」「省エネ」「高輝度」という特徴を有し、有機EL照明とともに、省エネ化を担う次世代照明として期待されている。

一般的な白熱電球の寿命は約1,000~2,000時間、蛍光灯の寿命は約6,000時間であるのに対し、LED照明の寿命は約40,000時間。また、LED電球の消費電力は、同等の明るさで比較した場合、白熱電球の約15%、蛍光灯の7割程度とされている。

 その他のLED照明の特長として、

・LED素子が小さく光の制御も容易にできる
 (器具のコンパクト化、点滅や調光も自在)
 ・視認性が高い(信号灯や道路交通表示灯に採用されている)
 ・有害物質の水銀を使用していない(蛍光灯には水銀が使用されている)
 ・紫外線や赤外線をほとんど出さない
(虫が寄り付きにくく、照らすもの色あせを起こしにくいため、食品関係や文化財などの照明に適している)
 ・蛍光灯と比べてチラつきが少ない
 ・割れない(ガラスを使用していない)
 ・廃棄物処理、交換などの管理コストを削減できる(長寿命)

 などがあげられている。

 一方、LED照明の欠点としては、

・熱に弱い
 (密閉空間や断熱処理をされた個所への設置では制約が生じる場合もある)
 ・光に指向性がある
 (白熱電球などはすべての方向に光が放射される。指向性の問題では、反射板などで工夫を改良した製品が開発されている)
 ・電気回路があるため、白熱電球や蛍光灯に比べて重い
 (器具の強度に注意する必要がある)

 などがあげられている。

また、価格が高いことが、これまでLED照明の普及の足かせとなっていた。しかし、震災後の電力不足を受け、節電対策としてLED照明の需要は急増し、この好機を捉えるために、各メーカーは、相次いで価格を抑えたLED照明の新製品を投入。低コスト化と製品ラインナップの拡充により、LED照明市場は急拡大している。すでに国内照明市場ではLED照明が主役となりつつある。

さらに、照明単体としてだけではなく、液晶テレビのバックライトや野菜工場での光源としても採用されることが増えているため、LED市場はますます拡大が見込まれている。

震災後の節電対策としてLED照明市場は急成長

国内家電量販店を対象とした市場調査会社、GfK Japanは量販店店頭でのLED照明の販売動向について発表している。これによると、LED電球の数量シェアは、2010年下半期以降、20%前後で推移していたが、2011年6月に43.5%となり、月間として初めて白熱電球を上回った。

また、天井に直接取り付けるLEDシーリングライトのシェアは、2012年3月に数量ベースで50.1%、金額ベースで74.6%となり、初めて数量・金額ともに蛍光灯タイプを上回った。2011年は、メーカーのシーリング市場への参入や製品の拡充が追い風となった。2012年3月時点でのLEDシーリングライトの平均価格は22,000円で、1年前より40%下落している。

また、マーケティング会社の富士経済は、2012年4月にLED照明関連国内市場を調査・分析した結果を発表している。これによると、LED照明の国内市場が導入期から成長期へと移行する中、2011年は震災後の電力需給のひっ迫による節電対策が急増し、2011年のLED照明国内市場は、前年比2.6倍に拡大した。本調査では、シーリングライトなどLEDが組み込まれてセット化された「照明器具市場」と、LED電球やLED蛍光灯などのアフターユースの「LED管球ランプ市場」、「演出・看板用LED照明」の3品目を対象としている。

品物別にみると、2011年度はLED照明器具が前年比2.4倍、LED電球は同3.2倍となった。また、LED管球ランプでは、ハロゲンランプ代替形が同10倍、店舗からオフィス、施設などで導入が進んだLED蛍光灯が同8.8倍となり、LED照明器具では住宅用主照明のシーリングライトが同66.7倍となっている。

今後のLED照明市場は、引き続き節電対策などで採用が進み、市場は堅調に拡大していくが、低価格化に伴い、数量ベースに比べて、金額ベースの伸びは低くなると予測している。

復興支援・住宅エコポイントでもLED照明の普及を後押し

住宅の省エネ化、住宅市場の活性化、被災地復興支援を目的に実施されている「復興支援・住宅エコポイント」。本制度は、エコ住宅の新築やエコリフォームを行った場合、商品やサービスと交換できるポイント(1ポイント1円相当)が付与されるもの。

「平成23年度第3次補正予算」(平成23年11月21日成立)において、平成23年7月31日で工事の対象期間が終了した住宅エコポイント制度の新制度として再開された。新制度では、ポイントと交換できる商品(復興支援商品・エコ商品)として、シャープ、パナソニックのLED照明等が追加された。

本制度のポイント発行対象工事の着工・着手期限は平成24年10月31日。また、ポイント発行申請(平成24年5月1日以降)には、事前に予約が必要で、被災地以外の予約申込受付は7月4日午前9時の到着分終了している。ポイントの申請期限は、エコ住宅の新築、エコリフォーム、そして、建て方によって異なる。ポイントの交換期限は、平成27年1月31日まで。

導入が着々と進む一方、残された課題も

交換時に明るさを確保するには...

LED照明に交換したら暗くなったという話も聞く。これについて、LED照明を販売するオプティレッド ジャパンの照明コンサルタントである岩﨑稔氏は、「LED照明は指向性が強いため、その特徴を考慮せず水銀灯や蛍光灯から交換すると暗くなってしまうケースも多い」と説明する。また、現在の照明設計が適切でなく、無駄に明るい場合もあるという。

「最近は部屋全体を照らすアンビエント照明と、作業空間を照らすタスク照明を効率よく配して省エネを図る照明設計が進んでいる。発光効率lm/W(ワット当たりの光の量)や照度だけでなく、用途や省エネ性を考えた提案ができる販売店を選ぶとよい」とアドバイスする。

家庭向けが主流の「電球タイプLED」の問題点

家庭向けが主流のLED電球は、白熱電球のように電球だけを交換すればよいというわけにはいかない場合もある。例えば、多くのLED電球は放熱部が一体となっており、白熱電球より重いため、照明器具の耐荷重にも注意しなければならない。

また、建物の防音や省エネ対策のため、天井などに断熱材に使用された建物には、断熱材施工器具が使用されているが、この場合、器具内の温度が高熱になることから、使用できないLED電球もある。こうした断熱施工照明器具や密閉形照明器具での使用、調光器つきソケットとの組み合わせなどでは、条件に合ったLED電球を選ぶ必要がある。

パナソニックでは、日本電球工業会が策定した「電球形LEDランプの店頭での選び方提案」のガイドラインをもとに、LED電球の選び方として、

 1.明るさ「ルーメン(lm)」値をチェック、
 2.口金のサイズをチェック、
 3.光の色と確度で選ぶ、
 4.使用する器具をチェック、
 5.断熱材施工器具かをチェック、

の5つのポイントをあげている。一般家庭でLED電球へ交換する際にも、用途や省エネ性、設置場所を考えて、きちんとアドバイスしてくれる販売店で購入することをおすすめしたい。

LED電球は明るさ不足で12社に措置命令

2012年6月、消費者庁は、一般照明用LED電球を販売する、エディオンやコーナン商事など事業者12社に対して、LED電球の商品パッケージ等に表示されている明るさが確保されていないことから、景品表示法第6条の規定に基づき、措置命令を行った。12社は、LED電球の商品パッケージ等において、「白熱電球60W形相当の明るさ」等と表示していたが、用途によっては比較対照とした一般照明用白熱電球(白熱電球)と同等の明るさを得ることができなかった。

照明用語と単位
出典:一般社団法人日本電球工業会ウェブサイト

光源の明るさの性能は、光源から放射される光の総量(全光束)が条件に左右されず一定であることから、全光束で測定するのが適当とされている。日本工業規格(JIS)において、白熱電球の40W形の全光束は485lm、白熱電球の60W形の全光束は810lmと規定されている。

また、白熱電球は、ほぼ全方向へ配光されるのに対し、LED電球は、現時点においては、下方向への配光が強い。そのため、LED電球を、空間全体を照らすための照明器具等に取り付けて用いる場合には、少なくとも白熱電球の60W形と同等以上の全光束でなければ、同等の明るさを得ることはできない。しかし、実際には対象商品の全光束は、ほとんどがJISの値を大きく下回るもので、用途によっては比較対照とした白熱電球と同等の明るさを得ることができないものであった。

なお、LED電球が、白熱電球の60W形の代替品として、ダウンライト、スポットライト等の上方・水平方向へ光が広がる必要性の低い照明器具等に取り付けて用いる場合には、下方向の明るさが白熱電球の60W形と同等となる程度の全光束であれば、白熱電球の60W形と同等の明るさを得ることができるとされている。

参考:消費者庁、LED電球の明るさ不足で12社に措置命令

オフィスなどへの導入が加速する「蛍光管タイプLED」の問題点

節電意識の高まりを受け、店舗やオフィスなどで導入が加速するLED蛍光灯。2011年は前年比8.8倍、2012年も前年比2.1倍の成長が見込まれている。

手軽さを売りにしているLED蛍光管だが、そもそも蛍光管には、インバータ式やグロー式など、電流を制御する安定器に複数の方式がある。もしも異なった方式の蛍光管を取り付けてしまうと、事故につながる危険性がある。また、日本電球工業会の調査では、衝撃や振動などで器具から脱落が懸念される製品があることもわかっている。そこで、専用の安定器を開発してセットで販売するメーカーも出てきている(安定器の付け替え工事が必要)。

LED電球に「安全性」の新基準、LED蛍光灯への対応は...

2012年7月1日、改正電気用品安全法が施行された。本改正により、LEDランプ及びLED電灯器具を製造または輸入をする場合、電気用品安全法に基づく届出、電気用品を国が定める技術基準に適合させること、また、販売時に技術基準への適合を示す「PSEマーク」を表示することが義務付けられた。これは、LEDランプ等が白熱電球等の照明器具の代替として急速に市場に普及し、新規参入の企業も相次ぐ中、LEDランプ等で実際に事故が発生している点を踏まえて実施されたものだ。

これまで電球を生産していたのは、大規模な生産設備を備える限られたメーカーだけだった。しかし、LED照明の場合は、発光する素子さえ入手できれば、組立てに大がかりな設備は必要ないため、参入障壁が従来のガラスの電球よりも低くなっている。それが、新規参入を容易にしている。そこで、従来のようにメーカーの自主規制に任せるのではなく、早いタイミングでの安全性確保のルール作りが求められていた。

しかし、今回の電気用品安全法で規制の対象となったのは、電球形状のLEDランプのみ。蛍光ランプ形状のLEDランプ(直管LEDランプ)は対象とならなかった。これは電球形状のLEDランプは、誰もが家庭で扱うことのできる「用品」に当たるが、直管LEDランプは照明器具に改造を行う必要のある製品もあるため、電気工事のプロが扱う製品として、誰もが扱う「用品」から除外されているためだ。

 「ここに大きな問題が隠れている」と一般社団法人日本電球工業会の技術部長である八木敏治氏は指摘する。「市場に出回る『G13』の口金を持つ直管LEDランプは、口金の形が従来の蛍光ランプと同じ。電気回路がまったく異なる製品も口金が同じで、装着だけはできてしまう。間違った組み合わせでは、不点灯だけでなく発熱や発煙、感電などの可能性もある。それでは危険なので、日本電球工業会は新規に2つの口金の規格を策定した」と八木氏。

 普及が急速に進むのは電球形LEDランプだけでなく、直管LEDランプも同様。安全性確保のためにも電球形だけでなく、直管LEDランプの標準化も急務となっている。

参考:環境2012年9月号 【巻頭特集】ユーザーの対応Q&A LED 電気安全法対策

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