地熱発電

地熱発電とは、地下深部のマグマや火山活動による熱エネルギーを利用して発電する方式である。地熱貯留層から採取した高温の蒸気や熱水でタービンを回して発電を行い、天候や昼夜に左右されず安定した出力を維持できる再生可能エネルギーのベースロード電源として位置づけられている。日本初の本格的な商業地熱発電所は1966年に竣工した松川地熱発電所(岩手県)であり、国内には豊富な資源量が存在する。
発電の仕組みと主な方式
地熱発電は、地下に存在する高温高圧の蒸気や熱水を取り出してタービンを駆動させる。燃料を燃焼させないため発電過程で温室効果ガスをほとんど排出せず、CO2排出抑制に寄与するクリーンエネルギーである。地下資源の性状や温度域によって主に2つの方式が用いられる。
1つは「フラッシュ方式(直接減圧蒸気発電)」で、200℃以上の高温高圧熱水を減圧沸騰させて蒸気を取り出し、直接タービンを回す。国内の大規模地熱発電所の多くで採用されている。もう1つは「バイナリー方式」で、熱水の温度が比較的低い(80〜150℃程度)場合に、水よりも沸点が低い代替媒体(ペンタンなど)を熱交換器で気化させ、その媒体蒸気でタービンを回す。温泉熱などを利用した小規模開発にも適している。
日本の導入動向と政策目標
日本の地熱資源ポテンシャルは約2,347万kWと推計され、米国やインドネシアに次ぐ世界第3位の規模を誇る。一方で、国内の発電設備容量は約60万kW(国内電源構成比で約0.3%)にとどまり、世界順位では第10位前後に位置する。政府は第6次エネルギー基本計画において、2030年度の導入目標を現状の約2.5倍となる148万kWに設定している。
長年、開発の大きな障壁となっていたのが立地規制である。国内の有望な地熱資源の約8割が国立公園・国定公園の内部に存在していたが、2021年9月に環境省が自然公園法に関する通知を改定した。これにより、第2種・第3種特別地域での原則不許可規定が見直され、国内資源の約7割の区域で開発検討が可能となった。さらに、従来10年以上を要していた環境影響評価などの開発リードタイムを最短8年程度へ短縮する施策も進められている。
2024年3月には、岩手県八幡平市で出力14,900kWの安比地熱発電所が運転を開始するなど、1万kW級の大規模案件の新規稼働も実現している。
事業開発における課題と地域共生
地熱発電の実務においては、地下探査に伴う初期投資リスクの高さや、温泉事業者をはじめとする地域関係者との合意形成が重要課題となる。地下探査段階では、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による地表調査費の助成や出資・債務保証制度の活用が不可欠である。
また、温泉資源への影響懸念を払拭するため、IoTを用いた地下水位や泉温の科学的モニタリングとデータ公開が求められる。発電後の還元水や排熱を融雪、温水プール、ハウス栽培などに多段利用する「地域共生型スキーム」の構築が進んでおり、住民参加で設立された小国町の地域主導型地熱発電所のような合意形成モデルも注目されている。
企業における活用と次世代技術への展望
再エネ調達を推進する企業の間では、昼夜を問わず発電できる地熱電力を評価する動きが強まっている。固定価格買取制度(FIT)から市場連動型のFIP制度への移行が進むなか、大分県や鹿児島県に点在する複数の地熱発電所から電力を調達した物流・食品製造拠点のオフサイトコーポレートPPAなど、GXを見据えた直接調達事例が登場している。
技術開発の面では、地下4〜6kmの超高温・超高圧を利用する超臨界地熱発電や、人工的に亀裂を形成して熱を回収する強化地熱システム(EGS)、熱水を汲み上げずに密閉管路内で熱を循環させるクローズドループ方式など「次世代型地熱」の実用化に向けた官民の取り組みが進められている。
日本の主な地熱発電所(2026年9月時点)
出力1,000kW以上の主な施設を掲載。国内のすべての地熱発電設備を網羅した一覧ではない。
- 北海道
森発電所、森バイナリー発電所、南茅部地熱発電所 - 岩手県
松川地熱発電所、葛根田地熱発電所(2号機)、松尾八幡平地熱発電所、安比地熱発電所 - 宮城県
鬼首地熱発電所 - 秋田県
上の岱地熱発電所、澄川地熱発電所、大沼地熱発電所、山葵沢地熱発電所 - 福島県
柳津西山地熱発電所 - 岐阜県
奥飛騨温泉郷中尾地熱発電所 - 熊本県
わいた地熱発電所、わいた第2地熱発電所、小国まちおこしエネルギー地熱発電所、南阿蘇湯の谷地熱発電所 - 大分県
杉乃井地熱発電所、大岳発電所、八丁原発電所、滝上発電所、滝上バイナリー発電所、菅原バイナリー発電所 - 鹿児島県
山川発電所、大霧発電所、山川バイナリー発電所、メディポリス指宿発電所
参考
- 経済産業省 資源エネルギー庁 ― 地熱発電について
- 環境省 ― 国立・国定公園と再生可能エネルギーの取組について
- 独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC) ― 日本の地熱発電
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