バイオコークス

バイオコークスとは、木くずや樹皮、農業残渣、食品加工残渣などの植物由来バイオマスを原料とし、粉砕後に高温・高圧下で成形・反応させて製造される固形バイオマス燃料である。
近畿大学の井田民男教授(現・バイオコークス研究所長)によって開発された。従来の木質燃料に比べ高い物理的強度と比重を持ち、石炭コークスの代替炭材として産業炉や製鉄プロセスでの脱炭素化に資する資源として期待されている。
バイオコークスの特徴と成形技術
バイオコークスは、植物バイオマスに含まれるリグニンやヘミセルロースなどを熱硬化・反応させる亜臨界水領域の加温・加圧技術によって成形される。木質ペレットや木質チップといった一般的な固形バイオ燃料とは異なり、石炭コークスと同等の見かけ比重(1.2〜1.3前後)と優れた高温耐荷重性を備える点が最大の特徴である。
原料の自由度も高く、間伐材や製材端材のみならず、もみ殻、茶殻、コーヒーの搾りかす、食品工場の油分を含む残渣、さらには廃プラスチックとの複合原料に至るまで幅広い有機性廃棄物が活用できる。原料に応じた粉砕・乾燥処理が必要となるものの、廃棄物減量と資源循環を両立できる燃料として開発が進められてきた。
2014年3月には近畿大学と大阪ガスエンジニアリングがマレーシアでパーム椰子由来のバイオマスを原料としてバイオコークスの生産実証試験を開始した。また、2014年5月には近畿大学とイオン子会社が北海道恵庭市でバイオコークスを利用したハウス加温栽培の研究を開始している。
製鉄・鋳造・産業炉への用途拡大と実証
当初は農業用ハウスやボイラーの熱源利用が中心であったが、近年は温室効果ガス排出量の多い高温熱プロセスの脱炭素化を担う炭材としての評価が高まっている。炉内での耐荷重性に優れるため、高熱下でも崩壊せず通気性を維持できる特性を活かし、鋳造工場のキュポラ炉、電炉(アーク炉)での加炭材や還元材、製鉄高炉、さらには廃棄物溶融炉における石炭代替としての社会実装が進む。
カーボンニュートラルの達成やGXの推進に向けて、産業界での導入検証も活発化している。2024年11月にはDOWAエコシステムが環境技術研究所にバイオコークスの製造・燃料評価装置を導入し、廃棄物溶融炉での石炭コークス代替や廃プラ配合燃料の実用化に向けた民間一貫体制を整備した。また海外展開においても、マレーシアでのパーム椰子残渣利用実証に加え、タイにおける二国間クレジット制度(JCM)の調査や東南アジア諸国との連携が進んでいる。
国際標準化と実務導入における課題
バイオコークスを含む熱生成バイオカーボンについては、国際規格の策定作業が本格化している。2024年には日本産業標準調査会(JISC)の承認を経て、国内審議団体である固体バイオ燃料標準化協議会(JBSA)がISO/TC 238(固体バイオ燃料及び熱生成バイオカーボン)に参画し、品質や試験方法の国際標準化を推進している。
一方で、実務上の導入においては品質管理と調達体制の確立が課題となる。原料残渣に由来する灰分、水分、塩素、カリウムなどのアルカリ金属成分は、炉材の劣化や製品金属の品質に影響を及ぼす恐れがあるため、原料選定と前処理プロセスの厳格な管理が不可欠である。さらに、安価な化石燃料に対抗できる経済性の確保や、産業炉の大量需要に見合う原料集荷網と量産供給プラントの整備が普及に向けた重要な要素となる。
参考
- 経済産業省 ― GX推進のためのグリーン鉄研究会とりまとめ
- 近畿大学 バイオコークス研究所 ― バイオコークスとは
- DOWAエコシステム ― ニュースリリース(2024年11月)
- 固体バイオ燃料標準化協議会(JBSA) ― ISO/TC238活動動向
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