永続地帯

永続地帯とは、ある区域内で得られる持続可能な資源によって、その区域のエネルギー需要と食料需要のすべてを賄うことができる区域を指す概念のこと。
千葉大学の倉阪秀史教授の研究室と特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)による共同研究プロジェクトにより指標化され、毎年推計結果が公表されている。完全に区域内で自給自足(地産地消)している必要はなく、年間推計の上で域内の再生可能エネルギー供給量や食料生産量が需要量を上回っている状態を指す。
永続地帯に関する評価指標の分類と算出条件
永続地帯の評価体系は、エネルギーと食料の自給状況に応じて以下の4つに区分して公表されている。
需要量の算出において、大規模工場などの「産業用エネルギー」および自動車などの「運輸用エネルギー」は除外されており、対象は「民生用需要(家庭・業務)+農林水産業用需要」に限定されている。そのため、工業が集積する都市部では数値が低くなり、農山漁村部で高くなりやすい特性がある。また、地域内で発電されたエネルギーが域内のみで消費されているオフグリッド状態を意味するものではなく、年間の「供給量÷需要量」による統計的な収支バランスを表す指標である点に留意が必要である。
- 永続地帯(狭義・永続地帯市町村):食料自給率(カロリーベース)と地域エネルギー自給率がともに100%を超える自治体
- エネルギー永続地帯:民生用・農林水産業用のエネルギー需要(電力+熱)の100%を域内の再エネで賄える自治体
- 電力永続地帯:民生用・農林水産業用の電力需要の100%を域内の再エネ電力で賄える自治体
- 食料自給地帯:食料需要(カロリーベース)の100%を域内の食料生産で賄える自治体
全国の達成状況と導入トレンド
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)などの進展に伴い、達成自治体数は大幅に拡大してきた。千葉大学らによる永続地帯の報告書公表を報じた記事にあるように、2023年度推計では電力需要を域内再エネで賄える「電力永続地帯」が364市町村に達し、全国自治体の2割を突破している。また、熱需要を含めた「エネルギー永続地帯」は234市町村(全体の約13%)、食料とエネルギーの両立を達成した「永続地帯市町村」は134市町村となっている。
都道府県別の地域エネルギー自給率では、秋田県をはじめとする複数の道県で50%以上を達成している。一方で、これまで導入を牽引してきた太陽光発電は系統制約や適地の減少により伸び率が鈍化しており、近年は風力発電の伸び率が太陽光を上回る傾向が見られる。加えて、電力自給に比べて木質バイオマス熱や地熱などを活用した「再エネ熱利用」の普及が遅れている点が構造的な課題となっている。
地域脱炭素や事業開発における活用
永続地帯の指標は、環境省が進める地域脱炭素ロードマップや脱炭素先行地域、自治体が策定する地球温暖化対策実行計画(区域施策編)において、地域共生型再エネの進捗度やエネルギー自立度を測る客観的なベンチマークとして参照されている。
発電事業者やエネルギー関連企業にとっては、地域資源を活用した分散型電源の開発や地域マイクログリッドの構築、自治体新電力との連携施策を検討する際の基礎データとなる。また、食料生産と発電を両立させる営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の展開など、食料とエネルギーの双方の自給率向上に寄与する事業モデルの重要性も高まっている。
参考
- 千葉大学倉阪研究室・環境エネルギー政策研究所(ISEP) ― 永続地帯 公式ウェブサイト
- 環境エネルギー政策研究所(ISEP) ― 日本国内の市区町村別の再生可能エネルギーの供給実態などを把握する「永続地帯2024年度版報告書」の公表
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