ZEV規制(ゼロエミッション車規制)

ZEV規制(ゼロエミッション車規制)とは、自動車メーカーに対して販売台数の一定割合以上を排出ガスを出さないゼロエミッション車にすることを義務付ける制度である。米国カリフォルニア州大気資源局(CARB)が先駆けて導入し、電気自動車(BEV)や燃料電池車(FCEV)の普及を促す代表的な環境政策として世界各国の自動車環境規制に影響を与えている。
新規則「ACC II」への移行と2035年の新車100%義務化
カリフォルニア州は2022年8月、従来の規制枠組み(ACC I)を発展させた新規則「Advanced Clean Cars II(ACC II)」を採択した。この新規則は2026年型モデルから適用され、州内で乗用車および小型トラックを一定数以上販売するメーカーを対象に、ZEVおよび基準を満たすプラグインハイブリッド車(PHEV)の販売比率目標を段階的に引き上げる。
義務比率は2026年型モデルの35%から始まり、2030年型モデルで68%、2035年型モデルには100%に達する設定となっている。これにより、2035年以降は実質的にガソリン専用車の新車販売が禁止されることになり、内燃機関から電動パワートレインへの完全移行が義務付けられる。
連邦大気浄化法(CAA)第177条に基づき、ニューヨーク州やマサチューセッツ州、ワシントン州など10州以上の自治体(セクション177州)もカリフォルニア州のACC II基準を採用・追随しており、米国新車市場の相当規模をカバーする強力な規制網を形成している。
対象車両の厳格な要件と未達時のペナルティ
ACC IIでは、規制達成に充当できる車両の要件が大幅に厳格化された。BEVおよびFCEVには航続距離や急速充電規格への対応が求められるほか、PHEVについてはEVモードでの走行距離が50マイル(約80km)以上あることが必須とされ、義務台数に参入できる割合も最大20%までに制限されている。
車両性能だけでなく、長期間の使用に耐えうる品質を確保するため、バッテリーの最低残存容量保証(8年または10万マイル走行時点で一定割合を維持)や修理容易性といったアシュアランス要件も課される。
メーカーが年間目標台数を達成できない場合、1台あたり最大2万ドルの金銭的ペナルティが科される可能性がある。基準を上回る販売を行った他社から超過クレジットを購入して未達分を補填する手段もあるが、クレジット調達費用の負担は自動車メーカーの収益性に直結するため、各社は電動化シフトを加速させている。
連邦法との係争リスクと商用車・グローバルへの波及
カリフォルニア州の独自規制は、連邦政府の環境規制適用免除(ウェイバー)の取り消しをめぐる政治的・法的な対立に直面している。2024年12月に米環境保護庁(EPA)がACC IIに対する適用免除を承認したものの、連邦政権の交代や連邦議会による議会審査法(CRA)を通じた免除取り消しの動き、それに反発する推進州側の法廷闘争など、規制の法的安定性をめぐる動向には継続的な注視が必要である。
一方で、乗用車にとどまらず中・大型商用車を対象とした「Advanced Clean Trucks(ACT)」などの規制も進展しており、商用フリートの脱炭素化も急速に進む。日本市場においても、三菱ふそうトラック・バスと鴻海精密工業によるZEVバス開発の協業など、商用分野でのゼロエミッション車両開発と供給網構築が進められている。
日産の新型リーフ発表とEV市場の変遷を振り返るコラムでも触れられているように、1990年のZEV法成立当初は実験的な導入にとどまっていた電動車は、現在では英国のZEVマンデートをはじめ世界各国へ制度が波及し、グローバル自動車産業の競争軸を決定づける存在となっている。
参考
- カリフォルニア州大気資源局(CARB) ― Advanced Clean Cars II Program
- 日本貿易振興機構(JETRO) ― 米加州大気資源委、ゼロエミッション車規制承認、2035年までにガソリン新車販売を全面禁止へ
- 日本貿易振興機構(JETRO) ― 米環境保護庁、2026年以降のカリフォルニア州ACCIIの連邦規制適用免除を承認
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