IEC規格

IEC規格とは、国際電気標準会議(IEC)が制定する電気・電子技術分野の国際規格である。電気通信分野を除く広範な電気機器、電子部品、システム、関連評価手法を対象として、国際的な安全性や相互運用性、品質基準を定めている。加盟国の国家規格との整合化を通じて、技術的障壁の解消や国際貿易の円滑化を図る基盤となっている。
国内体制とJISとの整合化
IECは各国の代表的な標準化機関(1国1機関)で組織される非政府間国際機関であり、加盟国は89か国、発行規格数は約9,000件にのぼる。日本からは産業標準化法に基づく日本産業標準調査会(JISC)が代表機関として加盟している。
WTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)に基づき、加盟国が国家規格を制定・改訂する際には国際規格との整合を図ることが原則として義務付けられている。これに伴い、日本においてもIEC規格と日本産業規格(JIS)との整合化(JIS整合化)が継続的に推進されている。
4つの適合性評価システム
IECでは、規格の策定だけでなく、製品やシステムが規格に適合しているかを国際的に相互確認するための「適合性評価システム(CA Systems)」を運用している。従来は3制度であったが、再生可能エネルギー分野の普及に伴い、現在は以下の4つのシステムで構成されている。
- IECEE:家庭用電器製品やIT機器などの安全性・電磁両立性(EMC)などを対象とする電気機器・電子部品適合試験制度。加盟試験機関が発行するCB試験証明書を活用し、各国の安全認証手続きを簡略化する。
- IECQ:電子部品の品質評価やプロセスマネジメント、有害物質管理プロセスを認証する制度。
- IECEx:可燃性ガスや粉塵が存在する危険場所で使用される防爆電気機器やサービスの認証制度。
- IECRE:風力発電、太陽光発電、海洋エネルギー設備やそのコンポーネントを対象とした再生可能エネルギー認証システム。
脱炭素・環境対応における標準化動向
近年は製品安全のみならず、脱炭素や環境配慮に関するIEC規格の重要性が急速に高まっている。環境規格を統括するIEC TC 111では、電気・電子機器のカーボンフットプリント算定規格(IEC 63366)や、温室効果ガス(GHG)削減への貢献度を可視化する「削減貢献量」の算定規格(IEC 63372)などの標準化が進められている。
たとえば、「新しい国際規格で算定、自社製品使用時のGHG削減貢献量 キヤノン」では、国際規格「IEC 63372」に基づき製品使用時の温室効果ガス削減貢献量を算定し、第三者検証を取得した企業の先進事例が紹介されている。
また、モビリティやエネルギーマネジメント分野でもIEC規格の適用が進む。電気自動車向けの急速充電方式では、CHAdeMOに加え、日中共同開発の次世代超高出力規格「ChaoJi」や欧米の「CCS」、大型商用車向けの「MCS」など多様な規格の標準化や改訂が審議されている。さらに、定置用大型蓄電池システム(BESS)の安全性や長期運用管理に関しても、国際的な安全基準(IEC 62933シリーズ)の整備が進む。たとえば、「中古蓄電池のリユース促進へ 新安全基準「JIS C 4442」発行」では、BESSの安全な利用やリユース推進に向けてIECの技術専門委員会での議論と連動した国内基準策定の動きが示されている。
企業実務における活用と留意点
企業の輸出や事業展開において、IEC規格への準拠と認証の活用は実務上の必須要件となるケースが多い。電気機器の海外展開では、IECEEのCB制度を利用することで重複試験のコストや納期を削減し、仕向け国の認証取得を円滑化できる。
再エネ発電所や蓄電システムの建設プロジェクトでは、プロジェクトファイナンスの融資条件や調達要件としてIECRE認証や関連IEC規格の適合証明が求められる事例が増加している。欧州のEUバッテリー規則や持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)など海外の環境規制に対応するためにも、有害物質管理(IEC 62321)やリサイクル性を含め、製品ライフサイクルの初期設計から整合規格を把握し組み込むことが求められる。
参考
- 日本産業標準調査会(JISC) ― 国際標準化(IECの概要)
- 日本貿易振興機構(JETRO) ― IEC規格:日本 | 貿易・投資相談Q&A
- 国立国会図書館 リサーチ・ナビ ― IEC規格
- International Electrotechnical Commission ― About the IEC
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