レンジエクステンダー型EV

レンジエクステンダー型EVとは、走行用のバッテリーに加えて小型の発電専用エンジンを搭載した電気自動車のこと。
英語ではEREV(Extended-Range Electric Vehicle)、中国市場では増程式電動汽車(REEV)とも呼ばれる。エンジンを車輪の直接駆動には用いず発電のみに限定することで、純粋な電気自動車の弱点である航続距離への不安や充電インフラ不足を補う。
レンジエクステンダー型EVの構造的特徴と一般的なプラグインハイブリッド車との違い
レンジエクステンダー型EVは、動力伝達の構造としてはシリーズ方式のハイブリッドシステムに分類される。車輪を駆動する力は100%電気モーターから得ており、バッテリー残量が低下した段階で小型の内燃機関が始動し、車載の蓄電池や駆動用モーターへ電力を供給する仕組みである。
一般的なハイブリッド車やプラグインハイブリッド車(PHEV)の多くは、エンジン動力を発電だけでなく高速巡航時などの車輪駆動にも併用するパラレル方式やスプリット方式を採用している。これに対し、レンジエクステンダー型EVはエンジンが完全に発電機を回す役割に特化しているため、加速感や静粛性といった走行フィールは純粋なBEV(バッテリー式電気自動車)と同等の特性を維持できる点が大きな違いである。
国内外の市場動向と主要メーカーの動き
純電気自動車の普及ペースの鈍化や充電インフラの整備遅れを背景に、レンジエクステンダー技術は世界的に再評価が進んでいる。特に中国市場では新エネルギー車(NEV)の普及策を背景に需要が急伸しており、理想汽車(Li Auto)や賽力斯集団・ファーウェイ連合の「AITO」などが台数を伸ばし、同国のNEV市場において有力なセグメントを確立している。
日系メーカーでは、マツダが発電用ロータリーエンジンを搭載した「MX-30 Rotary-EV」を市販化しているほか、過去にはBMWが「BMW i3」に発電用エンジン仕様を設定していた実績がある。さらに米ステランティスが大容量EREVシステムをピックアップトラックに導入することを表明したほか、現代自動車やトヨタ自動車も主要市場に向けたEREVの投入を検討・公表するなど、大手自動車各社が電動化戦略の選択肢として相次ぎ注力している。
北米や中国をはじめとする電動車市場の動向は激しく変化しており、市場環境の変化に伴い各社の開発方針が見直される事例もみられる。ソニーとホンダの合弁企業による事業計画の再検討を報じた記事のように、EV需要の変容やインフラ課題への適応として、純粋なBEV一本槍から過渡期の技術を含む多様なパワートレイン戦略への修正が業界全体で加速している。
制度上の位置づけと脱炭素実務における留意点
企業のフリート管理や脱炭素推進の実務においては、法制度上の分類と排出規制への適合性に留意する必要がある。日本のクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)や車両登録制度において、レンジエクステンダー型EVは純粋なBEVではなくプラグインハイブリッド自動車の区分に整理されている。
また、走行用電力の供給にガソリンなどの化石燃料を消費するため、将来的なゼロエミッション規制への適合には制約が伴う。欧州連合(EU)が掲げる新車からのCO2排出ゼロ基準や、米カリフォルニア州などが推進するZEV規制において、レンジエクステンダー型EVは恒久的なゼロエミッション車としては扱われない。あくまで充電環境が未整備な地域や長距離移動用途における「過渡期の移行技術」として位置づけられている。
参考
- 一般社団法人次世代自動車振興センター ― CEV補助金対象車両一覧
- 日本貿易振興機構(JETRO) ― 世界のEV市場に変容の兆し
- 国際エネルギー機関(IEA) ― Global EV Outlook 2024
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