BCP(事業継続計画)

BCPとは、Business Continuity Planの略称で、自然災害や感染症の蔓延、サイバー攻撃、事故などの不測の事態が発生した際に、中核事業の中断を最小限に抑え、仮に中断した場合でも目標時間内に早期復旧させるための行動計画である。業務停止に伴う取引先の流出や企業評価の低下を防ぎ、自社の経営基盤およびサプライチェーンを維持することを目的とする。
BCPの対象範囲とBCMへの発展
従来のBCPは大規模地震や火災などの局所的な物理災害への対策が中心であったが、近年はパンデミックや地政学リスク、ランサムウェア等のサイバー攻撃、気候変動に伴う激甚水害など、企業を取り巻く脅威が多様化している。そのため、原因の種別を問わず「人・設備・情報・ライフライン」といった経営資源の機能停止を想定し、代替手段を講じる「オールハザード型」の対応が主流となっている。
策定した計画を形骸化させないためには、平時からの教育や訓練、定期的な見直しを行うBCM(事業継続マネジメント)の実践が不可欠である。2024年1月に発生した令和6年能登半島地震では、広域的な道路寸断や長期にわたる停電・断水、通信途絶といった複合的なインフラ途絶が顕在化した。これにより、単一拠点での完結型対策だけでなく、代替拠点の確保や地域間連携、サプライチェーン全体を視野に入れた強靭化の重要性が再認識されている。
国内における制度動向と策定状況
内閣府の調査によると、BCPの策定率は大企業で約76%に達する一方、中堅・中小企業では約45〜54%にとどまっており、サプライチェーンを支える中小企業の対応格差が課題とされている。
国は中小企業の防災・減災対策を支援するため、中小企業等経営強化法に基づき事前対策計画を認定する「事業継続力強化計画(ジギョケイ)」を運用している。認定を受けた企業は、防災・減災設備に対する税制優遇や低利融資、補助金審査における加点措置などを得ることができる。また、社会的な要請を背景とした制度的な義務化も進んでおり、介護分野では3年間の経過措置を経て2024年4月から全介護事業所を対象に自然災害および感染症BCPの策定が完全義務化された。
脱炭素(GX)と防災を両立するエネルギーBCPの実務
製造業の工場や物流施設、オフィスビルでは、電力供給の停止が直ちに操業停止につながるため、エネルギー自立化がBCPの実務において極めて重要な要素である。近年は、平時の電力コスト削減や脱炭素を推進するGXの取り組みと、発災時の非常用電源確保を同時に達成する投資が主流となっている。
具体的には、オンサイトPPAモデルなどを活用した自家消費型太陽光発電と産業用蓄電池の併設が進んでおり、平時のScope 2削減を図りつつ、停電時には自立運転機能によって工場の重要ラインや拠点の機能を維持する設計が採用されている。また、電気自動車(EV)を「走る蓄電池」として建物へ給電するV2X技術の活用も広がっており、平時の社用車運用と非常時の電源供給を兼ね備えたレジリエンス向上の取り組みが注目されている。
参考
- 内閣府 ― 事業継続ガイドライン
- 内閣府 ― 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査
- 中小企業庁 ― 事業継続力強化計画(ジギョケイ)
- 厚生労働省 ― 介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援
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