従来の蒸気タービン方式ではエネルギーが無駄に消費される
エネルギーのうち、有効な仕事として使えるエネルギーを「エクセルギー」と呼ぶが、燃料を熱に変える従来のやり方ではこのエクセルギー損失が大きく、場合によっては燃料が持つポテンシャルの半分も活用されていないという。 東京大学生産技術研究所で、燃焼時にできるかぎりエネルギーの有効活用を図る「超燃焼技術」を研究している堤敦司氏に、現在の工場におけるエネルギー使用の問題点を聞いた。

東京大学生産技術研究所 教授
エネルギー工学連携研究センター長 堤敦司氏
50%以上のエクセルギーを蒸気タービンは捨てている
―エネルギーを有効に活用するためには、どうしたらいいのでしょうか。
エネルギー保存の法則により、エネルギーは理論上、使っても使っても減らないはずです。 しかし、私たちはたくさん化石エネルギーを消費している。 それは、有効な仕事として使えるエネルギー= 「エクセルギー」をムダに消費して、最終的にはエクセルギー率の低い熱に変えているからで す。そうするともう何にも使えない。
あるものからどのくらいのエクセルギーが取り出せるかという指標をエクセルギー率というのですが、熱エネルギーだけがその割合がものすごく低いんです。 電気エネルギーのエクセルギー率は100%、化石エネルギーは90%以上なのに対し、熱エネルギーは100℃くらいで10%前後、1000℃くらいでも50%でしかありません。
蒸気タービンの性能のいいものは最大で600℃程度まで加熱できますが、その温度での熱エネルギーでも44%しかエクセルギー率がないんです。 この場合は、90%以上のエクセルギー率を持つ燃料を44%までしか有効活用できておらず、50%以上のエクセルギーが失われているのです。 燃料や電気を直接熱に変えると、ロスがどうしても発生してしまう。