環境用語集 省エネ法(改正省エネ法)

日本の省エネ政策の根幹、「省エネ法」とは

省エネ法(正式名:エネルギーの使用の合理化に関する法律)は、日本の省エネ政策の根幹となるもので、石油危機を契機に1979年に制定された。工場や建築物、機械・器具についての省エネ化を進め、効率的に使用するための法律。

工場・事業所のエネルギー管理の仕組みや、自動車の燃費基準や電気機器などの省エネ基準におけるトップランナー制度、需要家の電力ピーク対策、運輸・建築分野での省エネ対策などを定めている。

省エネ法が直接規制する事業分野は、「工場等(工場・事務所その他の事業場)」、「輸送」、「住宅・建築物」、「機械器具等(エネルギー消費機器等または熱損失防止建築材料)」の4つである。

省エネ法の概要

工場・事業場 対象:工場・事業場等を設置して事業を行う者
(エネルギー使用量1,500kl/年以上の特定事業者・特定連鎖化事業者(=フランチャイズチェーン事業等の本部))
・エネルギー管理者等の選任義務
・エネルギー使用状況等の定期報告義務
・中長期計画の提出義務
※すべての事業者に省エネの努力義務
運輸 対象:貨物・旅客の輸送を業として行う者(輸送事業者)
(保有車両数トラック200台以上、鉄道300両以上等の特定輸送業者)
・エネルギー使用状況等の定期報告義務
・中長期計画の提出義務
※すべての事業者に省エネの努力義務

対象:自らの貨物を輸送事業者に輸送させる者(荷主)
(年間輸送量が3,000万トンキロ以上の特定荷主)
・計画の提出義務
・委託輸送に係るエネルギー使用状況等の定期報告義務
※すべての事業者に省エネの努力義務
住宅・建築物
※2017年4月1日より「建築物省エネ法」において措置
対象:住宅・建築物の建築主・所有者
(延べ床面積300㎡以上)
・新築、大規模改修を行う建築主等の省エネ措置に係る届出義務・維持保全状況の報告義務
・建築主、所有者の努力義務

対象:建売戸建住宅の供給事業者
(年間150戸以上)
・供給する建売戸建住宅における省エネ性能を向上させる目標の遵守義務
※すべての事業者に省エネの努力義務
エネルギー消費機器等 対象:エネルギー消費機器・熱損失防止建築材料の製造・輸入事業者
<トップランナー制度>
(乗用自動車、エアコン、テレビ等のそれぞれの機器などにおいて商品化されている最も優れた機器などの性能以上にすることを求める制度)
※すべての事業者に省エネの努力義務
一般消費者への情報提供 事業者の一般消費者への情報提供の努力義務
・家電等の小売業者による店頭での分かりやすい省エネ情報(年間消費電力、燃費等)の提供
・電力・ガス会社等による省エネ機器普及や情報提供等

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事業者(企業)単位へ 改正省エネ法のポイント

省エネ法では、これまで改正により、「工場・事業場(本社、工場、店舗等)」単位から「事業者(企業)」単位へ規制対象の拡大、高炉による製鉄業・セメント製造業などエネルギー多消費産業へ「ベンチマーク制度」(事業者の省エネ状況を業種内で比較できる指標を設定する制度)の導入、トップランナー制度対象品目の拡大、建築物分野の対象に「住宅」を追加などの規制強化が行われてきた。

東日本大震災後、電力需給が逼迫したことを受けて、改正された省エネ法(2013年5月31日公布)では、従来からの省エネに加えて、ピーク対策など時間の概念を含んだ、電力需給バランスを意識したエネルギー管理を推進する対策が盛り込まれた。また、業務・家庭部門に対しては、住宅・建築物や設備機器の省エネ性能の向上に向けた対策が強化された。

具体的には(1)「電気の需要の平準化」(=電気の需要量の季節または時間帯による変動を縮小させること)の推進や(2)トップランナー制度の建築材料等への拡大等に関する措置の追加である。また、以降も、これらの措置を具体化するため政令・省令・告示を改定している。主な内容は以下の通り。

(1)電気の需要の平準化の推進(2014年4月1日施行)

▶新たな評価指標として電気需要平準化評価原単位を策定

電気の需要の平準化に資する措置を実施した事業者が省エネ法上不利な評価を受けないよう、「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準(※)」を見直した。

(※)事業者の判断の基準 事業者が、省エネを適切・有効に実施するために必要な判断の基準となる具体的な事項を、経済産業大臣が定めたもの。事業者は、この判断基準に基づき、方針や管理標準(管理マニュアル)を作成し、省エネに取り組む必要がある。特定事業者・特定連鎖化事業者は、毎年国に提出する定期報告書の中で判断基準の遵守状況を報告することが求められている。

▶電気需要平準化時間帯を設定

電気の需要の平準化を推進する必要がある時間帯を全国一律で夏期(7~9月)・冬期(12~3月)の8~22時に設定した。

▶工場等における電気の需要の平準化に資する措置に関する事業者の指針を策定

・自家発電設備の活用や蓄電池、蓄熱システムの活用等の事業者が取り組むべき措置に関する指針を策定した。

・各事業者はこの指針に基づき、電気需要平準化時間帯には電気の使用から燃料または熱の使用への転換や、電気需要平準化時間帯から電気需要平準化時間帯以外の時間帯への電気を消費する機械器具を使用する時間の変更などの電気の需要の平準化に資する取組みに努めなければならない。

▶定期報告書様式の変更

これらの内容を踏まえ、電気需要平準化時間帯の電気使用量、電気需要平準化評価原単位とその悪化理由、電気の需要の平準化に資する取組みを報告するための記載欄を追加した。

(2)トップランナー制度の建築材料等への拡大(2013年12月28日施行)

建築材料のトップランナー制度の対象として、新たに「断熱材(押出法ポリスチレンフォーム、グラスウール、ロックウール)」(2013年12月28日施行)、「サッシ・複層ガラス」(2014年11月30日施行)を指定し、省エネ基準等を策定した。

その他の改正事項

▶ISO50001の発行を契機とした判断基準の見直し

エネルギーマネジメントシステムの国際規格であるISO50001の活用の検討等について、「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」に規定。

▶オンライン申請手続きの簡素化。

▶エネルギー消費機器等のトップランナー制度の対象として、「三相誘導電動機」と「電球形LEDランプ」を指定し、省エネ基準等を策定。

▶未利用熱活用制度の創設

外部で発生した未利用熱を購入し、自社の工場等で使用した場合に省エネの取組みとして評価するため、定期報告のエネルギー消費原単位の算出にあたり、エネルギー使用量から差し引くこととした。それに伴い、未利用熱の量の記載欄を追加。

▶発電専用設備の新設に当たっての措置の見直し、電力供給業におけるベンチマーク制度の見直し。

▶コンビニエンスストア業のベンチマーク制度を、2017年度定期報告より開始。

省エネ法でのエネルギーの定義

省エネ法でのエネルギーとは、燃料、電気、熱を指し、廃棄物からの回収エネルギーや、風力・太陽光発電などによる自然エネルギーは対象外。

  1. 燃料
    ・原油、揮発油(ガソリン)、重油、その他石油製品(ナフサ、灯油、軽油、石油アスファルト、石油コークス、石油ガス)
    ・可燃性天然ガス
    ・石炭、コークス、その他石炭製品(コールタール、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス)であって、燃焼その他の用途(燃料電池による発電)に供するもの

  2. ・1に示す燃料を熱源とする熱(蒸気、温水、冷水等)
    ※対象外:1の燃料を熱源としない太陽熱及び地熱などの熱
  3. 電気
    ・1の燃料を使った電気
    ※対象外:1の燃料を起源としない太陽光発電、風力発電、廃棄物発電などの電気

省エネ法によく出てくるキーワード

特定事業者

設置しているすべての工場・事業場の年間のエネルギー使用量の合計が1,500kl(原油換算)以上である事業者。省エネ法に基づき、エネルギー使用の合理化のためのエネルギー管理が義務づけられている。

特定連鎖化事業者

フランチャイズチェーン本部(連鎖化事業者)については、設置しているすべての工場・事業場と一定の条件を満たす加盟店のエネルギー使用量の合計が1,500kl(原油換算)以上である事業者。省エネ法に基づき、エネルギー使用の合理化のためのエネルギー管理が義務づけられている。

特定荷主

自らの貨物を輸送事業者に輸送させる者を荷主という。このうち、貨物の年間輸送量が3,000万トンキロ以上の事業者(全業種対象)が特定荷主として指定される。省エネ法に基づく、毎年度、定期報告書と計画書の提出が義務づけられる。

特定輸送業者

貨物・旅客の輸送を業として行う者を輸送事業者という。このうち、輸送区分ごとに保有する輸送能力が一定基準以上(鉄道300両、トラック200台、バス200台、タクシー350台、船舶2万総トン(総船腹量)、航空9千トン(総最大離陸重量))の事業者が特定輸送事業者として指定される。省エネ法に基づき、毎年度、省エネ計画と定期報告が求められる。

エネルギー管理指定工場等

工場・事業場において、年度のエネルギー使用量が原油換算で1,500kIを超える場合は、エネルギーの使用の合理化を特に推進する必要があることから、エネルギー管理指定工場等として指定される。このうち、3,000kl以上の工場等は「第一種エネルギー管理指定工場等」に、1,500kl以上3,000kl未満の工場・事業場は、「第二種エネルギー管理指定工場等」に指定される。

エネルギー管理統括者

省エネ法では、特定事業者等に、エネルギー管理統括者とエネルギー管理企画推進者の選任を義務付けている。このうち、エネルギー管理統括者は、経営的な視点を踏まえて、事業者全体として鳥瞰的なエネルギー管理を行える者(役員クラスを想定)が担う。中長期計画のとりまとめや現場管理に関わる企画立案・実施を行う。

エネルギー管理企画推進者

省エネ法では、特定事業者等に、エネルギー管理統括者とエネルギー管理企画推進者の選任を義務付けている。このうち、エネルギー管理企画推進者は、エネルギー管理統括者の職務を実務面から補佐する者。エネルギー管理員講習修了者か、エネルギー管理士の資格を有する者でなければいけない。

ベンチマーク制度

詳しくはこちら

トップランナー制度

省エネ法において、機器等のエネルギー消費効率基準の策定方法に、基準値策定時点で最も高い効率の機器等の値を超えることを目標とした最高基準値方式(トップランナー方式)を採用した制度。乗用自動車、エアコン、テレビ等のそれぞれの機器などにおいて商品化されている最も優れた機器などの性能以上にすることを求めている。

「住宅のトップランナー基準」について詳しくはこちら

参考)省エネ法の概要(経済産業省 資源エネルギー庁)

関連リンク

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