「組織内の垣根を超えた連携で事業を加速させたい」、「新たな事業創出のため現状の社会課題を整理したい」、「気候変動や紛争などの地球規模の問題が増えている」。変動性や不確実性、複雑性が増す社会において、現状を認識し、協働の捉え方や課題解決の方向性を示す新連載「実務に活かす環境教育・環境倫理」。協働ガバナンスや社会的学習が専門の東京都市大学大学院 環境情報学研究科の佐藤 真久教授に寄稿してもらう。第1回は「複雑で変化する社会の現状認識」について新時代を捉える5つの視点で概説してもらった。
直面する多くの問題
今日、気候変動、金融・経済危機、ガバナンス、肥満、貧困格差などの問題を耳にすることが多くなりました。これらは決して日本をはじめとする先進国だけの問題ではなく、途上国でも起きています。肥満の問題は、今、アメリカの農村で、経済的な余裕がなく安いパンケーキを食べることによって太ってしまう子どもたちの間で深刻化しています。そして、途上国では消費意欲にかき立てられた人たちが、肥満になってしまう状況があります。また、「貧困の時代」から「貧困の格差の時代」へと変わってきています。富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなっていくという二極化の状況が、生まれています。世界の富の半分を7、8人で持っているともいわれています。さらには、社会的な公正、紛争、人工知能に奪われる職、新型グローバル感染症の流行、生物多様性の喪失、水問題(アクセス、質、量)、エネルギー問題、高齢化の問題などもあります。高齢化は日本だけの話ではなくベトナムやタイでも問題になっています。これまで高齢化は先進国で深刻化しているイメージでしたが、今や世界中の国々が直面している問題です。自然災害や教育の質、若者の雇用問題なども世界中で深刻化しています。