地球沸騰化時代の「社会的共通資本論」―企業人と政策立案者に示唆するもの

50年後も残る課題―温室効果ガス排出の社会的費用は誰が支払うのか

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COP28が来月末に控えている。昨年のCOP27では、気候変動に対して特に脆弱な途上国の「損失と損害」を支援するため、専用の基金を設置するという合意に至った。一方、気候変動による豪雨や干ばつなどが世界中で顕著になっている。50年前に宇沢弘文教授が提唱したこの基金構想について、京都大学名誉教授で地球環境戦略研究機関シニアフェローの松下和夫氏に寄稿してもらった。(連載第5回、バックナンバーはこちら

比例的炭素税と大気安定化国際基金構想

「比例的炭素税」と「大気安定化国際基金構想」、この二つを地球温暖化の抑制と適応のために宇沢弘文教授は提唱した(※1)。実行可能な気候安定化政策として、世界的な炭素税の制度化を主張したものだ。炭素税は地球温暖化対策の切り札と言われるカーボン・プライシングの主要な手段である。

カーボン・プライシングとは、炭素に価格を付けることだ。すなわち、気候変動の原因となる二酸化炭素(CO2)による社会的外部費用(気候変動によるさまざまな被害など)を内部化するために、排出される炭素の量に応じて何らかの形で課金をすることである。このことによって、CO2排出量削減に対する経済的インセンティブを創り出し、気候変動への対応を促すことになる。炭素に価格が付くことによって、CO2の排出者は量を減らすか、対価を支払うかを選択することになる。排出量削減技術の開発や再生可能エネルギーの普及も加速される。その結果、社会全体ではより柔軟かつ経済効率的にCO2排出量を削減できる。

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