地球沸騰化時代の「社会的共通資本論」―企業人と政策立案者に示唆するもの

50年後も残る課題 ― 自動車利用による社会的費用は誰が支払うのか

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自動車を利用することによって、どれだけ自然環境やインフラ破壊がされているかに焦点をあて、1974年に宇沢弘文教授が著した『自動車の社会的費用』。ベストセラーとなり、日本社会に衝撃を与えたその内容とは。その後取られたさまざまな自動車公害対策といまだに残る課題は。京都大学名誉教授で宇沢教授に師事した地球環境戦略研究機関シニアフェローの松下和夫氏に寄稿してもらった。(連載第4回、バックナンバーはこちら

自動車により自然環境がどれだけ汚染されているか

宇沢弘文教授は「社会的共通資本」の概念に基づき公害問題に取り組み、1974年に『自動車の社会的費用』 を著した(※)。これは自動車を利用することによって、自然環境や社会的インフラストラクチャーという社会的共通資本がどれだけ汚染されたり、破壊されたりしているかという点に焦点をあて、自動車の社会的費用の算出を試みたものである。宇沢教授によると、自動車通行によって人々が市民的権利を侵害されずに暮らせるよう、道路や都市構造を造り替えた場合の総費用は、当時の物価水準で毎年1台当たり約200万円とされた。これは実際上自動車保有を大きく制限することを意味し、社会に衝撃を与えた。こうして『自動車の社会的費用』は、ベストセラーとなり、日本社会に大きなインパクトを与えた。

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