日本では2016年4月から小規模消費者、家庭を含めた小売部門での電力自由化が開始されます。10電力における家庭への電力販売量は全体の4割に満たないのに、利益の7割は家庭部門への電力販売から得られているという「小さなものから、大きく搾取」というのがこれまでの電力小売事業の姿でしたから、自由化によってどのような状況が生み出されるのか興味が尽きません。日本の将来を占う意味でも世間の関心が高まっているので、すでに小売全面自由化がなされ18年の経験を持つドイツでは、自由化開始後にどのような事態が生じたのか過去の経緯を振り返ってみましょう。
EUによって決められたエネルギー事業の自由化
再生可能エネルギーの推進やエネルギーシフトという国家プロジェクトを実施し、世界を牽引するドイツ、という評価が一方ではあるため、あまり日本では知られていませんが、ドイツはエネルギー事業(電力、天然ガス)の自由化に対してはEUの中でも消極的で、かつ国内法への取り組みも遅れた国でした(※) 。例えば、イギリス、スカンジナビア諸国などエネルギー事業の自由化を牽引したEU各国では電力・天然ガスの自由化とともに、強力な監督・規制官庁の設立がなされましたが、ドイツではそれをあえて実施せず、問題が大きくなった2005年になってようやく連邦ネットワーク規制庁が新設されています(後述)。
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