20年以上続く「サントリー 天然水の森」活動や「ボトルtoボトル」水平リサイクルなどに注力するサントリー。2024年4月からは<地域共創>をテーマとした活動も展開する。同社の取り組みについて、サステナビリティ経営推進本部 部長の橋本 智裕氏に話を聞く。(前編はこちら)
自治体・住民・事業者が三位一体
地域と連携した活動という意味では、使用済みペットボトルをペットボトルに再生する『「ボトルtoボトル」水平リサイクル』にも長らく取り組んでいる。
使用済みペットボトルは、自治体が主体となって地域の住民から回収する。自治体・住民・事業者が三位一体となり<循環型社会>の実現に取り組む。最初に協定を結んだのは兵庫県の2市2町。同自治体から回収・再生したペットボトルは、サントリーの製品に使用している。
「住民からキレイに分別したペットボトルを集めることができる自治体の強みと、それをリサイクルにつなげられるサントリーの強みを掛け合わせてできた新しいスキームです。資源循環やCO2排出削減(約60%※)だけでなく、回収したペットボトルがペットボトルに再生されることが見える化されることで、住民の分別意欲の向上にもつながっています」
(※使用済みペットボトルからプリフォーム製造までの工程において、新たに化石由来原料を使用する場合との比較)
サントリーでは現在、全国200を超える自治体と「ボトルtoボトル」協定を締結。小学校4年生以上を対象にした『ペットボトルリサイクル』に関する出張授業なども提供しており、各地域の行政・業
界団体・教育機関・消費者など、多様なステークホルダーとの連携を強化している。

なぜ、サントリーが「地域共創」なのか
これまで進めてきた『サントリー 天然水の森』や『「ボトルtoボトル」水平リサイクル』の活動をさらに進化(深化)させるべく、2024年4月から一層力を入れているのが<地域共創>をテーマとした活動だ。
「天然水の森の活動や『「ボトルtoボトル」水平リサイクル』の活動などを通して地域との接点が深まり、過疎化、後継者不足、財源の課題など、地域の悩みを聞くことが多くありました。それに対し何かできることがないか、というのがきっかけです。地域とサントリーがwin-winになれる関係性を作りたい。地域の持つ資産とサントリーの持つ資産を掛け合わせながら、もっと大きなことができないか模索中です」
実際に兵庫県西脇市とは2010年に『天然水の森』の活動を開始し、森林整備に加えてサントリーの社員研修の場としても活用している。森づくりの過程で出る「育林材」(木材)の西脇市役所での活用、2022年には『「ボトルtoボトル」水平リサイクル』の協定を締結した。個別の活動の一つ一つが点から線につながり、面となって新たな価値創造、地域共創へとつながっている。同社ではこうした好事例を今後も生み出していく考えだ。

<地域共創>としての活動は始まったばかりだが、スピリッツの原料となる『ぶどう山椒』の主要産地である和歌山県有田川町では、農家の高齢化や後継者不足などで、今後の持続的な生産への危機感が高まっている。そこで同社は社内から希望者を募り、応募した社員が地域で開催された『ぶどう山椒収穫レスキュー』に参加した。
「実際に現地に行き体験することで、課題を実感できますし、気にかけていただく方や買っていただける方もいて拡がりを感じます。まずは、その課題に関心を持つ関係人口を増やしていくことが第一歩だと思います」
有田川町では現在、地元へUターンした30‐40代の若い世代が、『ぶどう山椒』を守る活動を開始。<地域共創>に取り組むサントリーの社員が連携し、共に活動している。
「『地域の資産×サントリーの資産でwin-win』を目指していますが、大事なのは地域側で現状に課題を感じ、変革をしていきたいという強い志を持つパートナーと出会うこと。『ぶどう山椒』を守り発展させるために新たな手法にチャレンジする地域の方々がいて、上質な原料を守りたいサントリーがいる。両者の思いが合致して初めて物事が前に進んでいく。各地でパッションのある方々といかに出会い、一緒に考える関係性を作りあげていけるかがカギだと思います」
サントリーと聞くと、マスの広いイメージが先に立つ。しかし、橋本氏は「国内約2万人の社員が、各地域でサントリーらしさを出せる活動ができれば新たな価値創造につながっていくはず」と話す。
「サントリーは、大きくビジネスをするだけでなく、自分の地域にも寄り添った活動をしてくれる。『サントリーがいて良かった』『一緒に取り組めて良かった』と言われるような活動をしていきたい。それが色んな地域に広がって、各地で『サントリーは地元のもの』と思っていただけるようになれば嬉しいと思いますし、それがサントリーの進めたい地域共創です」

サントリーホールディングス株式会社サステナビリティ経営推進本部 部長