
気候変動等の影響により、河川の浸水災害が激甚化、頻発化している。加えて、建設後50年以上経過する河川管理施設は2030年に全体の約42%、2040年に65%に達するなど水インフラの老朽化も深刻だ。国土交通省は2025年4月25日、今後の水管理のあり方や方向性を審議する第3回「流域総合水管理のあり方検討部会・小委員会」を開き、国土交通大臣の諮問に対する答申の骨子(案)をまとめた。
カーボンニュートラル実現へ水力・揚力電源の開発など強化
総合的な水管理のあり方をあらためて審議・検討するのは、水災害の頻発化や水インフラの老朽化以外にも様々な背景や課題が存在するからだ。2050年カーボンニュートラル実現を目指した水力電源や再エネの調整電源である揚力電源の開発や、生物多様性の危機に応じた2030年ネイチャーポジティブ実現への対応などが求められる。
水利用ニーズの変化(需要減、局地的需要増、営農形態変化等)に応じた調整の枠組み構築や無降雨日数の増加や積雪量の減少などの渇水リスクに対する備えの強化も不可欠。高度化する気象予測技術や洪水予測技術、進展するデジタル技術を水管理に活用していく必要もある。
治水・利水・環境の「相乗効果の発現」「利益相反の調整」
流域総合水管理の展開については、2024年に閣議決定された「水循環基本計画」の重点的な取り組みの一つとして挙げられている。流域総合管理とは流域全体の地水・利水・環境等のあらゆる関係者が水管理に協働して取り組み、流域治水・水利用・流域環境間の「相乗効果の発現」、「利益相反の調整」を図ることだ。そうした一体的な取組みを進めることで「水被害による最小化」、「水の恵みの最大化」、「水でつながる豊かな環境の最大化」を実現する。

流域の課題やデータ共有、高度な水管理技術の開発など
具体的取り組みとしては、気候変動や水需要の変化等を踏まえて以下を挙げる。
1)関係者の間で流域の課題や多様なニーズの共有
2)関係者間で流域内のデータ共有・公開
3)「既存施設の高度・柔軟な運用」「施設整備、施設再編」「危機時への備えの強化」「流域環境の空間的時間的連続性を高める」等、各取組を実施すること
4)流域関係者が水管理の調整等を行う仕組みの構築
5)高度な水管理を現場で実施するための技術開発・体制構築等
6)流域総合水管理に関する広報・海外展開等
流域総合水管理のあり方検討部会・小委員会ではこれらの骨子に基づいた答申をまとめ、近く国土交通大臣に提出する。