
政府は2025年4月22日、官公需における価格交渉・転嫁等について、誠実な対応を義務化した「令和7年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」(以下、基本方針)を閣議決定した。現在、中小企業では資材高騰や人件費の上昇などから、利益率が減少傾向にある。しかし、価格交渉力の弱さから、コスト増加分を価格に転嫁できないのが実情だ。
石破首相「コスト上がった場合は適切に価格交渉・転嫁に応じる」
政府では毎年度、中小企業の受注機会の増大に努力するよう定めた官公需法(1966年制定)に基づき基本方針を閣議決定する。同法では地方自治体が国の施策に準じて施策を行うように努める旨が規定されている。「基本方針」については、2025年1月に「地方創生2.0」を掲げる石破茂首相から「各省庁において、コストが上がった場合に、適切に価格交渉・転嫁に応じる」よう指示があり、2025年3月17日「官公需に係る副大臣会議」で基本方針(案)が取りまとめられた。

受注者からの申出がなくとも国等から年に1回以上の協議を行うこと
基本方針の主な内容は以下である。
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中小企業・小規模事業者向け契約目標は、比率61%(金額:5兆9193億円)、新規中小企業者(創業10年未満)向け契約目標は、3%以上とすること
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コスト増加分の価格交渉・転嫁に応じるように、複数年度にわたる物件及び役務の契約においては、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(2023年11月29日策定)を参考に、受注者からの申出がなくとも国等から年に1回以上の協議を行うこと
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ダンピング受注の排除を進め、低入札価格調査を行う際、実勢価格に沿った単価になっているか、業務に必要な工数が適切に計上されているかを確認し、実効性ある低入札調査を確保すること、等
また、閣議決定同日に、国、地方公共団体に対して、基本方針を正式に通知するとともに、官公需の価格交渉・転嫁について実際に協議を担当する職員等に向けて周知徹底することを要請。今後は、関係省庁と連携し、基本方針の説明会の開催などを通じて、国、地方公共団体に対して丁寧に説明し、中小企業者の受注機会の増大及び官公需の価格交渉・転嫁の促進に努めるとしている。