
2025年6月、経産省と国交省が北海道の「檜山沖」と「松前沖」の2海域を洋上風力発電「促進地域」とする案を公表した。2海域の想定出力規模は91万~114万kWで国内最大級となる。北海道はこうした再生可能エネルギーのポテンシャルが高い地域として知られるが、これからの夏休みにはたくさんの観光客が訪れるなど多面的な顔を持つ地域だ。
気候変動対策多く盛り込む
国交省は2025年6月17日、こうした北海道の開発計画を進める国土審議会北海道開発分科会第1回計画推進部会を開催した。同部会は2024年3月に閣議決定された第9期北海道総合開発計画の推進に向けた議論を行うために設置された。「ゼロカーボン北海道」など、気候変動への対応を多く盛り込む方針だ。
北海道総合開発計画は第1期開発計画が1951年に策定され、以後70年以上にわたり、豊富な未開発資源をもつ広大な地域として、計画に沿って様々な事業が展開されてきた。開発の結果、1869年に約58,000人だった人口は500万人余りに、道内総生産は約20 兆円に達した。一方で、1995年約569万人だった人口が2024年には約504万人に減少し、2050年には約382万人に減少する見込みだ。

「我が国の豊かな暮らしを支える北海道」など2つの目標
第9期開発計画では、新型コロナウイルス感染症の拡大や2050年カーボンニュートラルに向けた国の政策展開、さらにはウクライナ情勢等を背景とした食料安全保障問題の顕在化等、日本を取り巻く状況の変化を受けて、以下の2つの目標を掲げている。
1.我が国の豊かな暮らしを支える北海道~食料安全保障、観光立国、ゼロカーボン北海道
2.北海道の価値を生み出す北海道型地域構造~生産空間の維持・発展と強靱な国土づくり< /p>
計画期間は2024年度からおおむね10年間としている。
再エネ需要先としてデータセンター誘致も
計画の主要施策のうち「地球温暖化対策を先導するゼロカーボン北海道の実現」に焦点をあてると、基本方向として
1)北海道の地域特性を活かした持続可能な脱炭素社会の形成
2)エネルギー基地の形成
3)北海道のCO2吸収力の発揮
をあげている。
1)の重点的施策としては
・再生可能エネルギーの導入拡大、送電系統の強化等
・地域資源の有効活用やエネルギーの地産地消
・徹底した省エネルギーとエネルギー転換
が盛り込まれた。

洋上風力など再エネ、北海道が重要な役割担う
北海道の再生可能エネルギー賦存量をみると、陸上風力(約 51%)、洋上風力(約29%)、太陽光(約25%)等で都道府県別全国1位。特に再エネの主力電源化に向けた切り札と期待される洋上風力については、2040年の全国導入目標の約3分の1を北海道が担うことが想定されている。また全国の森林面積の約 22%を占める北海道の森林は、CO2の吸収源として重要な役割を担っており、全国の約13%の海岸線を有する北海道の沿岸域におけるブルーカーボン生態系についても、新たなCO2の吸収源として期待されている。第9期総合計画、中でも気候変動対策に関連する施策が注目される。