
内閣府の消費者委員会は25年4月14日、JR東日本の運賃改定について調査・審議する第87回公共料金等専門調査会を開催した。消費者委員会は内閣府に設置された独立した第三者機関で、研究者や消費者団体役員から構成。内閣総理大臣、関係各大臣または消費者庁長官の諮問に応じて消費者問題について調査・審議を行う。
JR東の運賃改定、消費者に与える影響考慮必要
JR東日本は2025年12月6日、26年3月からの全路線での運賃値上げを国に申請した。すでに今年4月1日付で、所轄官庁である国交省の運輸審議会が「申請通り認可することが適当」と国交相に答申済みだ。しかし、JR東日本の料金改定については、消費者に与える影響を十分に考慮する必要があるとして、新井ゆたか消費者庁長官が公共料金等専門調査会の開催を求めた。

全体の値上げ率は7.1% 初乗り運賃が150円から160円へ
JR東日本が今回、申請した運賃改定案は全体の値上げ率が7.1%、増収率は5.0(増収額881億円/年)で、現行150円の初乗り運賃が160円に上がる。値上げ率は普通運賃が7.8%、通勤定期が12.0%、通学定期が4.9%となる。
設備更新、カーボンニュートラル対応など安定資金必要
JR東日本では値上げの理由として、人口減少や新しい生活様式の定着による鉄道利用の減少などに伴い、将来的に利用者の伸びが期待できないことを挙げる。多様化する顧客ニーズ、安全・サービスの維持向上、老朽化した車両・設備の更新、激甚化する災害やカーボンニュートラル等に対応し、持続可能な経営や事業を継続するために、安定的に資金を確保する必要があることを挙げている。
運賃改定、消費増税以外では民営化以来初
JR東日本が消費税導入や増税の際を除いて全面的な運賃の値上げを行うのは、1987年の会社設立、民営化以来初めてとなる。通勤や通学等でJR東日本鉄道を毎日利用する乗客も多く、国交省が募集したパブリックコメントには多くの声が寄せられた(24年12月9日~23日)。

パブリックコメント、賛否双方の意見
パブリックコメントには「公共交通でありながら、値上げが高すぎる」、「事業存続性の観点からやむを得ない」、「通学定期の値上がりで、家庭負担が増」、「都市部の運賃を上げるにとどめるべし」、「利用者減少により、値上げが必要」など賛否双方の意見があった。
今後、第87回公共料金等専門調査会でとりまとめられた意見が付され、物価問題に関する関係閣僚会議が開催される予定だ。
物価問題に関する関係閣僚会議は内閣官房長官が主宰し、長期および短期にわたる物価安定対策に関する重要問題について、関係閣僚が協議する場。直近では2024年、電力料金の改定や定形郵便物の上限料金改定等を巡って開催されている。