エネルギー管理士、と言えば規定以上のエネルギーを消費する工場には必要な、企業の省エネを推進する資格として知られている。しかし今回は、エネルギー管理士が地域のデマンドレスポンスに挑んでいるケースを紹介する。
地域のデマンドレスポンス、特に家庭部門にはインセンティブが必要
工場やビルなどのデマンドレスポンスに関しては、BEMSアグリゲータなどにより、徐々に普及が進むと思われる。また、BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)に関しては、投資コストをエネルギー削減コストで回収できるので、普及が期待できると言われている。
一方、一般家庭に対するデマンドレスポンスに目を向けてみると、今のところ業界として確立されたスキームがない。その理由の一つとして、デマンドレスポンスで得られる金銭的インセンティブが非常に少ない点がある。エアコンを止めたとしても数十円程度である。
また、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)に関しては、入浴の時間や、毎週決まった時間の外出情報など、他人に知られては困る情報などが漏れてしまうのではないか、といった心配の声も聞かれる。
この根本的な「家庭部門に対するインセンティブ不足」という課題に、新たな挑戦者が現れた。
経験が導き出す「インセンティブ」の答え

事業開発・研究本部事業開発センター
エネルギーソリューション推進部
児島豪志さん
凸版印刷株式会社 事業開発・研究本部事業開発センター エネルギーソリューション推進部に在籍する児島豪志さんは、これまでトッパングループのエネルギーマネジメントや、省エネ監査、自社工場でのエネルギー管理など、一般的にエネルギー管理士が活躍する業務を担当してきた。
また、工場において、個人情報を取り扱うためのセキュリティーシステムの構築などにも携わってきた。
2012年、児島さんはこれらの経験を活かして、一般家庭向けのデマンドレスポンススキームの構築を目指している。
同社は印刷業から始まり、今や情報・ネットワーク系から生活環境系、エレクトロニクス系まで幅広く展開する企業だが、どのような狙いがあるのだろうか。
「一般的に、省エネ生活というと我慢して節電するイメージがありますが、当社では地域全体で生活者が楽しみながら、賢い節電ができるような次世代生活支援スキームを構想しています」。
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