「環境規制に対応するため」「情報開示が求められるから」「市場へのアピールとして」。環境経営やサステナビリティ経営はそのような考え方でゴールセットされがちである。しかし、環境経営への過程における課題解決やノウハウの蓄積は新たな事業や収益の創出につなげられる。本連載では、環境・農業・サステナビリティにおける事業創出について、背景や政策動向、企業の取り組み事例などを整理し概説している。
ここからの第2パートは「生物多様性・自然資本は、なぜビジネスにとって重要なのか」。損失の流れを止め、回復に反転させる「ネイチャーポジティブ」への移行において、2030年には年間10.1兆米ドル(約1520兆円)規模のビジネス創出が見込まれる。その全体像やビジネスチャンスについて、ネイチャーポジティブ経営の実践に詳しいPwCサステナビリティのマネージャー村上 朝彦氏とシニアアソシエイト白石 拓也氏に5回に分けて解説してもらう。(連載第5回、バックナンバーはこちら)
「ネイチャーポジティブ」は社会・経済活動の基盤を守る礎
⾃然資本・⽣物多様性の損失の流れを止め、回復に反転させる状態を目指すネイチャーポジティブ。その主眼は、⼈類の社会・経済活動の基盤を守ることだ。
自然資本・生物多様性の喪失は、企業の経済的価値創造の土台が崩れることを意味する。⽣態系崩壊による経済への打撃が顕在化しつつあるなかで、次の波として注目されるネイチャーポジティブの全体像を解説する。