九電ショック

九電ショックとは、2014年9月に九州電力が再生可能エネルギー発電設備に対する系統接続申込みの回答を一時的に保留した出来事の俗称。
FIT(固定価格買取制度)の買い取り価格引き下げ前に接続申請が集中し、系統の受入容量を超過する懸念から発令された。北海道、東北、四国、沖縄の各電力会社も追随して保留を発表し、系統接続の遅れを事業計画で予期していなかった再エネ事業者や市場に大きな影響を与えた。
九電ショックの経緯と出力制御ルールの抜本改定
2014年7月時点で、九州電力管内の再エネ接続申込み量がすべて接続された場合、需要が落ち込む春や秋の軽負荷期における太陽光や風力の発電量が管内の全消費電力を上回ることが判明した。電力の需給バランス崩壊による系統不安を防ぐため、九州電力は同年9月24日、10kW未満の家庭用太陽光を除く系統接続の回答保留を公表した。
この接続保留を契機として、経済産業省はFIT法施行規則の抜本的な改正を実施した。従来の年間30日を上限とする補償なしの出力制御枠を超えて接続を認める代わりに、無制限・無補償での出力制御要請に応じることを前提とする「指定電気事業者制度(無制限・無補償ルール)」が整備された。また、2020年4月の発送電分離以降、系統運用および出力制御の実施主体は旧一般電気事業者から九州電力送配電をはじめとする一般送配電事業者へ移管されている。
出力制御の全国拡大と現行制度の進展
2018年10月に九州本土で国内初となる太陽光発電の出力制御が発動されて以降、再エネの普及拡大に伴い、出力制御は九州地域特有の問題から全国的な課題へと変化した。現在では東京エリアを除く全国の一般送配電事業者管内で出力制御が実施されている。全国の制御電力量は2023年度に約18億kWhに達し、前年度比で3倍強に拡大した。
制度面では、オフライン制御事業者が担えない制御量をオンライン制御事業者が一時的に肩代わりし、費用を事後的に精算する「オンライン代理制御」が2022年4月から全国展開された。さらに、送電網の混雑時における出力制御を前提として新規系統連系を認めるノンファーム型接続の適用が基幹系統から配電系統へ順次拡大している。加えて、優先給電ルールにおける再エネ制御順位を見直し、FIT電源をFIP電源より優先して制御する順序改定の運用検討が進められている。
再エネ事業実務における対策と留意点
九電ショック以降のルール改定を経て出力制御が常態化するなか、再エネ発電事業の開発や融資審査、セカンダリー取引では、一般送配電事業者が公表する出力制御見通しを基に保守的な制御率を事業収支計画へ織り込むことが必須となっている。実務上求められる主な対応策は以下のとおりである。
- 事業収支シミュレーションへの制御率織り込み:エリアごとの需給見通しを反映し、売電収入の減少リスクを事前に算定する。
- 出力制御装置のオンライン化:代理制御に伴う費用精算負担を抑え、公平な制御実績を確保するために遠隔出力制御装置を導入する。
- FIPへの移行と系統用蓄電池の併設:制御順位の変更を見据えた市場連動型制度への移行や、余剰電力を充電して価格差(アービトラージ)で収益化を図る蓄電システムの活用を進める。
- 需要側での余剰電力吸収:昼間の電気料金を引き下げるダイナミックプライシングやエコキュートの昼間稼働シフト、上げデマンドレスポンスを通じた余剰回避を行う。
九電ショックに関するコラム記事まとめ
関西大学 教授 安田氏
立命館大学 教授 村沢氏
環境エネルギー政策研究所(ISEP) 松原氏
宮崎大学 教授 霧村氏
関連ニュース 等
参考
- 資源エネルギー庁 ― 再生可能エネルギー出力制御の長期見通し等について
- 資源エネルギー庁 ― 再エネの発電量を抑える『出力制御』、より多くの再エネを導入するために
- 電力広域的運営推進機関(OCCTO) ― 業務指針および優先給電ルール
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