環境用語集 固定価格買取制度(改正FIT法)
固定価格買取制度(改正FIT法)とは
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、国が定める価格で一定期間電気事業者が買い取ることを義務付ける制度。「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)」に基づき、2012年7月1日にスタートした。
これに伴い、太陽光発電の余剰電力買取制度は本制度へ移行したが、10kW未満(住宅用等)の場合は、従来と同じ余剰電力を買い取る仕組みが適用されている。また、電気事業者が買い取りに要した費用は、国民が負担する全員参加型の制度となっている。
本制度の開始4年で、再生可能エネルギーの導入量は大幅に増加した一方、国民負担の増大や未稼働案件の増加、地域とのトラブルなどの課題が浮き彫りとなってきた。これらの課題を踏まえて制度の見直しが行われ、2017年4月に制度の根拠となる法律、改正FIT法が施行された。
新制度では、新認定制度を創設し、これまでの設備を確認する「設備認定」から、事業計画を確認する「事業計画認定」とすることで、事業実施の確実性の高い案件を認定する仕組みとした。事業者には、適切なメンテナンスの実施等も求めている。さらに、認定を受けて一定期間が過ぎても発電を始めない太陽光発電事業者には買取期間(調達期間)を短縮するなどのルールも設けた。
また、2,000kW以上の太陽光発電設備を対象に入札制度が導入され、一部の区分(太陽光10kW以上、風力20kW未満)を除いて、3年分の調達価格が設定されることとなった。
なお、FIT(Feed-in Tariff)は、電力を買い取る助成制度のことで、Feed-in は「入れる、供給する」、Tariffには「関税、電気などの公共料金の請求方式」などの意味がある。
太陽光発電に関しては、10kW未満の(住宅用等)の場合、現状と同じ余剰電力の買取制度が適用される。電気事業者が買取りに要した費用は、電気料金の一部として、国民が再生可能エネルギー発電推進付加金によってまかなう。
買取対象
- 太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスのいずれかを使い、国が定める要件を満たす設備を設置して、新たに発電を始める者が対象
- 発電した電気は全量が買取対象になるが、住宅用など10kW未満の太陽光の場合は、自分で消費した後の余剰分が買取対象
買取義務の内容
- 新制度では、新たに電気事業者と買取契約(特定契約)を締結する場合、認定設備で発電された電気の買取義務を負う電気事業者は、送配電事業者(一般送配電事業者と特定送配電事業者)となった。但し、2016年3月31日以前に成立している買取契約については、引き続き小売電気事業者が買い取ることができる。
買取費用の負担方法
- 電気事業者が買い取りに要した費用は、電気料金に上乗せされ、使用電力に比例した「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」として国民が負担する。
- 再エネ賦課金の単価は、全国一律の単価になるよう調整を行う。また、再エネ賦課金の単価は、買取価格(調達価格)等をもとに年間でどのくらい再生可能エネルギーが導入されるかを推測し、毎年度経済産業大臣が定める。推測値と実績値の差分については、翌々年度の再エネ賦課金単価で調整する。
2017年度以降の調達価格と調達期間
太陽光(※1)
調達区分 | 調達価格1kW当たり | 調達期間 | |||
---|---|---|---|---|---|
2017年 | 2018年 | 2019年 | |||
2,000kW以上(入札対象区分) | 入札制度により決定 | 20年間 | |||
10kW以上2,000kW未満 | 21円+税 | - | - | ||
10kW未満 (余剰買取) |
出力制御対応機器 設置義務なし |
28円 | 26円 | 24円 | 10年間 |
出力制御対応機器 設置義務あり(※2) |
30円 | 28円 | 26円 | ||
10kW未満 (ダブル発電・余剰買取) |
出力制御対応機器 設置義務なし |
25円 | 24円 | ||
出力制御対応機器 設置義務あり(※2) |
27円 | 26円 |
(※1) 太陽光発電については、10kW未満は1年間、10kW以上は3年間の運転開始期限が付与された。この期限を超過した場合、10kW未満は認定が失効、10kW以上は調達期間短縮(日または月単位)となる。
(※2) 北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の供給区域において、出力制御対応機器の設置が義務付けられる。
風力発電
調達区分 | 調達価格1kW当たり | 調達期間 | |||
---|---|---|---|---|---|
2017年 | 2018年 | 2019年 | |||
20kW以上 (陸上風力) |
(9月末まで22円+税)21円+税 | 20円+税 | 19円+税 | 20年間 | |
120kW以上 (陸上風力)リプレース |
18円+税 | 17円+税 | 16円+税 | ||
20kW以上 (洋上風力)(※1) |
36円+税 | ||||
20kW未満 | 55円+税 | - | - |
(※1)建設と運転保守のいずれの場合にも船舶によるアクセスを必要とするもの。
水力発電
調達区分 | 調達価格1kW当たり | 調達期間 | |||
---|---|---|---|---|---|
2017年 | 2018年 | 2019年 | |||
5,000kW以上 30,000kW未満 |
(2017年9月末まで24円+税)20円+税 | 20年間 | |||
1,000kW以上 5,000kW未満 |
27円+税 | ||||
200kW以上 1,000kW未満 |
29円+税 | ||||
200kW未満 | 34円+税 |
水力発電(既設導水路活用型)(※1)
調達区分 | 調達価格1kW当たり | 調達期間 | |||
---|---|---|---|---|---|
2017年 | 2018年 | 2019年 | |||
5,000kW以上 30,000kW未満 |
12円+税 | 20年間 | |||
1,000kW以上 5,000kW未満 |
15円+税 | ||||
200kW以上 1,000kW未満 |
21円+税 | ||||
200kW未満 | 25円+税 |
(※1)すでに設置している導水路を活用して、電気設備と水圧鉄管を更新するもの。
地熱発電
調達区分 | 調達価格1kW当たり | 調達期間 | |||
---|---|---|---|---|---|
2017年 | 2018年 | 2019年 | |||
15,000kW以上 | 26円+税 | 15年間 | |||
リプレース | 15,000kW以上 全設備更新型 |
20円+税 | |||
15,000kW以上 地下設備流用型 |
12円+税 | ||||
15,000kW未満 | 40円+税 | ||||
リプレース | 15,000kW未満 全設備更新型 |
30円+税 | |||
15,000kW未満 地下設備流用型 |
19円+税 |
バイオマス発電
調達区分 | 調達価格1kW当たり | 調達期間 | |||
---|---|---|---|---|---|
2017年 | 2018年 | 2019年 | |||
メタン発酵ガス (バイオマス由来) |
39円+税 | 20年間 | |||
間伐材等由来の 木質バイオマス |
2,000kW以上 | 39円+税 | |||
2,000kW未満 | 40円+税 | ||||
一般木材 バイオマス(※1) |
20,000kW以上 | (2017年9月末まで24円+税)21円+税 | |||
20,000kW未満 | 24円+税 | ||||
建設資材廃棄物 | 13円+税 | ||||
一般廃棄物・その他のバイオマス | 17円+税 |
(※1) 農作物の収穫に伴って生じるバイオマスを含む。
(※2)「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」に基づく証明のないものについては、建設資材廃棄物として取り扱う
再生可能エネルギーとは?
法律(エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律)で「エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの」として、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他の自然界に存する熱、バイオマスが規定されている。
一方、固定価格買取制度では、太陽光、風力、水力(設備認定基準上、出力が3万kW未満の水力発電所を用いたものに限定)、地熱、バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの(原油、石油ガス、可燃性天然ガス、石炭、またこれらから製造される製品を除く)のエネルギー源を変換して得られる電気を対象としている。
事業計画認定 について
太陽光50kW未満は「再生可能エネルギー電子申請ホームページ」により手続き(電子申請)を行う。太陽光50kW以上、風力、水力、地熱、バイオマスの場合は、必要書類を経済産業局宛に送付し、手続きを行う。また、2017年5月26日から、太陽50kW以上、風力、水力、地熱については、「再生可能エネルギー電子申請ホームページ」にて必要書類の作成が可能となった。バイオマスの電子申請システムについては、近日公開予定。(2017年11月現在)なお、太陽光2,000kW以上についは、入札区分となるため、指定入札機関と経済産業局それぞれに同様の申請書類の提出が必要となる等、他の区分における認定申請と手続が異なる。
シリーズ:緊急連載『改正FIT』
- 2030年まで太陽光・再エネを最大限に導入するために(第1回)
- 改正FIT9月末までの『事業認定』申請は、WEBで簡単に!(第2回)
- 『事業認定』申請の実務(第3回)―紙による申請を行うにはどうすれば良いか
- 『設備認定』から『事業計画認定』へ(第4回)
- 事業計画策定ガイドラインができたことで何が変わったのか?
電源ごとの基準
太陽光発電
2,000kW以上については入札制度により決定する。
【1】
太陽光発電パネルの種類に応じて定める以下の変換効率以上のものであること(フレキシブルタイプ、レンズ、反射鏡を用いるものは除く)。
- シリコン単結晶・シリコン多結晶系 13.5%以上
- シリコン薄膜系 7.0%以上
- 化合物系 8.0%以上
【2】
10kW未満の太陽光発電設備については、JIS基準(JISC8990、JISC8991、JISC8992-1、JISC8992-2)またはJIS基準に準じた認証(JET(一般財団法人電気安全環境研究所)による認証等を受けたもの。
【3】
10kW未満の太陽光発電設備については、余剰配線(発電された電気を同一需要場所の電力消費に充て、残った電気を電気事業者に供給する配線構造)となっていること。
【3】
10kW未満の太陽光発電設備でダブル発電の場合は、逆潮防止装置があること。
【4】
10kW未満の太陽光発電設備について、北海道電力・東北電力・北陸電力・中国電力・四国電力・九州電力・沖縄電力の需給制御に係る区域において、2015年4月1日以降に接続契約申込が受領された発電設備は、出力制御対応機器の設置が義務付けられる。
【5】
10kW以上の太陽光発電設備で屋根貸しの場合は、(1)全量配線となっていること、(2)設置場所が住宅の場合は居住者の承諾を得ていること。
風力発電
住宅用への導入も想定される20kW未満の小型風力については、JIS基準(JISC1400-2)またはJIS基準に準じた認証(JSWTA(日本小形風力発電協会)が策定した規格の認証またはJSTWA認証相当の海外の認証機関の認証)を得ていること。
地熱発電
特段、個別の要件は設けない。
水力発電
発電機の出力が3万kW未満であること。
揚水式発電ではないこと。
バイオマス発電
【1】
バイオマス比率を的確に算定できる体制を担保するとともに毎月1回当該バイオマス比率を算定できる体制を整えること。
【2】
使用するバイオマス燃料について、既存産業等への著しい影響がないものであること。
【3】
使用するバイオマス燃料について、その出所を示す書類を添付すること。
【4】
「間伐材等由来の木質バイオマス」「一般木質バイオマス・農作物残さ」「建設資材廃棄物」の調達区分については、木質バイオマス(リサイクル木材を除く)を使用する発電については、「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」に基づく証明書を添付すること。このガイドラインは、林野庁が木質バイオマスの供給者が、発電利用に供する木質バイオマスの証明に取り組むに当たって留意すべき事項等をまとめたものである。
(参考)林野庁
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