実録 環境ビジネスセミナー

エネルギー基本計画を読み解く

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全79ページにわたる現在のエネルギー基本計画。昨夏より改定に向けて議論がなされているなか、3年前に閣議決定された現在の基本計画はどのようなコンセプトで作られ、立てられた指針はどの程度反映されているのか。また次期エネルギー基本計画の見通しによって市場はどう変化していくのか。

4月11日に開催するセミナー「3時間でわかるエネルギー基本計画~ポイントを押さえ仕事に活かす~」で講師を務める日本総合研究所の段野孝一郎氏に話を聞いた。

エネルギー基本法

今後を占う上で欠かせないエネルギー政策の方針

エネルギー基本計画はエネルギー政策基本法に基づき策定され、概ね3年~4年ごとに見直しが図られる。現在の第4次エネルギー基本計画は、東日本大震災を踏まえて、2014年4月に閣議決定された。

日本総研の段野孝一郎氏によれば「第4次基本計画に盛り込まれた指針を見ると、その後、施策に反映されたものが多く含まれていることがわかります。企業は新たな市場への対応や競争環境を見極めるためにも、しっかり、モニタリングしていく必要があります」とエネルギー基本計画の重要性を指摘する。例えば、今後の再生可能エネルギーの位置づけ、省エネルギーの進捗、電力システム改革のロードマップなどを考える上でも、欠かせない行政文書である。

現在の基本計画のコンセプトは3E+S

それでは現在の第4次エネルギー基本計画はどのようなコンセプトにより構成されているのだろうか。理念は3E+S、つまり「エネルギー政策の要諦は、安全性(Safety)を前提とした上で、エネルギーの 安定供給(Energy Security)を第一とし、経済効率性の向上(Economic Efficiency) による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合 (Environment)を図るため、最大限の取組を行うことである」としている。

それに加えて、重要な視点として「国際的な視点」と「経済成長の視点」を挙げている。国際的な視点とはグローバルで気候変動対策が進んでいる状況を的確に把握しエネルギー政策を確立することと、日本のエネルギー産業のグローバル化を図ること。一方経済成長の視点とはエネルギー需給構造を改革してエネルギーコストを下げ、日本の競争力を強化することと、エネルギー市場の取引を活発化して経済成長の起爆剤にしようということだ。

競争を促進し、柔軟で効率的なエネルギー需給構造を創る

それでは3E+Sの理念を踏まえ、どのようなエネルギー供給構造を目指すのか。

「これまでエネルギーは例えば東京であれば東京電力と東京ガスというように固定した事業者から供給されていたが、電気、ガス、熱というような垣根を壊して、もっと多様な事業者が参加し、いろいろなエネルギーの強み、弱みを補完し合う供給構造を作ろうということです。さらに、供給側が供給するだけではなく、制度改革を通じて、需要側も参加し節電の工夫をし、ディマンドリスポンスを取り入れるなどして、柔軟かつ効率的なエネルギー需給構造を作っていこうというのが大きな方針です」(段野氏)

こうした方針は実際に先取りする形で、電力システム改革に反映されている。例えば電力システム改革では次のように3点の方針を掲げている。

(1)安定供給の確保

需要家の選択により需要を抑制したり、地域間の電力融通等の指示を行うことができる仕組みを導入し、需給ひっ迫への備えを強化する。

(2)電気料金を最大限、抑制

競争の促進や、メリットオーダーの徹底、需要家の選択による需要抑制を通じた発電投資の適正化により、電気料金を最大限抑制する。

(3)需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大

需要家の様々なニーズに多様な選択肢で応える制度に転換する。また、他業種・他地域からの参入、新技術を用いた発電や需要抑制策等の活用を通じてイノベーションを誘発し得る基盤を実現する。

こうした方針に沿って「広域系統運用の拡大」、「行政の監視機能の強化」、「小売及び発電の全面自由化」、「法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保」などの改革が進められてきた。

次ページ →書き込まれていたFIT法のロードマップ

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