実録 環境ビジネスセミナー

エネルギー基本計画を読み解く(2ページ目)

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書き込まれていたFIT法のロードマップ

次に第4次基本計画の中で、再エネはどう位置付けられているのか。

まず、再エネは「温室効果ガス排出のない有望かつ多様で、重要な低炭素の国産エネルギー源」として定義され、FITスタートから3年間、導入を最大限加速し、その後も積極的に推進するとうたわれている。他の電源は一度動かすと止まらず安定的に稼働するベースロード電源として原子力、石炭。電力需要に応じて運転、停止ができるミドル電源として天然ガス、LPガス、電力が足りなくなった時に簡単に運転できるピーク電源に石油とそれぞれ位置付けられている。

段野氏は「再エネは電源の中では一番目に取り上げられ、導入を進めていこうという政府の姿勢が表れています。またFIT施行から3年間最大加速した後、2015年6月で優遇価格での買取が終了したこと、出力抑制にかかわる指定電気事業者制度が導入されたこと、さらに2017年にFIT法が改正されことなど、基本計画に沿って制度が変わってきていることが確認できます」と解説する。

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2020年までに新築住宅・建築物のエネルギー基準への適合を義務化

エネルギー需要では徹底した省エネルギー社会とスマートで柔軟な消費活動を実現するとしている。業務・家庭部門では省エネ強化のため、トップランナー制度の対象の拡大を進めるとともに、2020年までに新築住宅・建築物について段階的にエネルギー基準への適合を義務化する。運輸部門ではEVなど次世代自動車の普及や、車の燃費改善などを目指し自動運転システムを可能にする高度道路交通システム(ITS)を推進するとしている。

産業部門に関しては「政策的に打つ手が乏しく、省エネ効果を促進する設備更新を促進するエネ合補助金など支援政策で、製造プロセスの省エネ化を誘導します。設備や省エネ材を扱っている事業者は補助金の情報収集を図ることで、省エネ設備などを顧客に提案できる機会を探れます」と解説。さらに省エネ法については2016年から定期報告書を提出する事業者を4段階(S・A・B・C)にクラス分けし、クラスに応じたメリハリのある対応を実施するとしている。

また消費活動の方では多様な選択肢から需要家が自由に選択することで供給構造に影響を与えることを目指している。具体的には電力供給の状況に応じて需要の抑制ができるディマンドリスポンスの活用を促進するため、2020年代早期にスマートメーターを全世帯・全事業所に導入するとともに、需要抑制の対価を需要家に支払う仕組みを確立するとしている。

省エネ・高度化法は強化され、電力市場改革も進化する

このように現在のエネルギー基本計画では、東日本大震災のパラダイムシフトや成長戦略との関連性を踏まえ、これまでも計画に盛り込まれていた「安定供給」、「経済性」、「環境」といったコンセプトに加え、「安全性」、「国際性」、「経済成長」といったコンセプトが色濃く反映されている。

「省エネの深堀」・「再エネの普及(2030年までに非化石電源比率44%)」・「エネルギー分野による日本の経済成長の牽引」を大きな目標とし、各施策とも、今後も引き続き強化が図られる模様だ。特に、非化石電源比率44%実現に向けた事業環境の整備と、電力・ガス市場の岩盤規制改革は強力に推進され、第5次にも引き継がれる見通しだ。

なお、4月11日のセミナー「3時間でわかるエネルギー基本計画~ポイントを押さえ仕事に活かす~」では、環境・エネルギー部門に異動された方や若手教育の一環として基礎となる政策を学びたい方などを対象に、計画のポイントとともにこの3年間の潮流、今後の展望についても語られる予定だ。

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