電力自由化・地域エネルギープロジェクト研究員 村井哲之の実践日記

(第10回)英国視察を経て、新しい循環型ビジネスモデルを構想(2ページ目)

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帰国後も、私は英国で見たセインズベリーの店舗から出るゴミを使用するバイオマス発電を核とした、真のエネルギー循環型ビジネスモデルが頭から離れませんでした。そして自らが構想する、次なるビジネスモデルの中核に、バイオマスプラントでガスを作り発電を行うバイオマス発電事業を据えることにしました。

運営する店舗や惣菜・食品工場から排出される食品廃棄物を、コストを掛けて処分をしている大手食品スーパーチェーンに、このビジネスモデルを提案したらどうかと考えました。郊外の大型物流センターの隣にバイオマス発電所を建設。各店舗に商品の配送をするトラックの帰り便に、それぞれの店舗から排出された食品廃棄物を乗せて持ち帰り発電の原料にする。食品廃棄物を使い、隣接するバイオマス発電所で発電し、大型物流センターで使う全ての電気を賄う。CO2が1mgたりともでない100%クリーンな自社生産の電気を使うという素晴らしい事業を構想(妄想?)したのです。

もちろん、廃棄物のビジネスにも携わっていましたので、発電原料たる食品廃棄物の効率的、かつ、安定的な供給の前に立ちはだかる「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)」の存在を知っていました。加えて、研究員として学ぶ中で、日本ではバイオマスのガス化・発電技術が十分でなく、事業の収益性を継続して担保できる段階でないことも知った上での構想でした。

そして、この大きな壁を乗り越えるきっかけとなる事件が起きました。まさに、事業構想の転換を決断したタイミングでです。

またしても、前職の顧客からの1本のSOSコールでした。「資金を出すので、現在食品スーパーが抱える4大課題のひとつを片付けてもらえないか」というものでした。全国の全ての食品スーパーが抱える共通課題だということでした。その課題は聞いたことがありましたが、産業廃棄物ではなく一般廃棄物の収集・運搬に関わるもので、これまでの私の浅い知識では、解決することが到底不可能でした。実現すれば、コストが半減することがわかっていても・・・。

しかし、3期研究員の一人が、その解決策を持って新たなバイオマス発電のビジネスモデルを構築中であったことから知識を得、勇気をもらった時に、考えられないような奇跡の出会いがありました。“セレンディピティ”が起こったのです。また、その後も、これを超える出会いが、研究員として大学院で構想を練る中で次々と生まれてきたのです。現在食品スーパーが抱える大きな課題とは?そのあたりは次回以降、詳しくお話しします。

事業構想大学院大学 ガス・電力小売・地域エネルギー事業構想
~地域でエネルギー事業を興すプロジェクト研究~
研究員募集中(4月開始)
地域経済と環境に貢献する地域エネルギー事業を構想する。2016年4月の電力小売全面自由化、固定価格買取制度(FIT)を活用した発電事業、地域資源であるバイオマス、風力、水力、太陽光、地熱などを用いた永続的な再生可能エネルギー事業を模索する。自社の経営資源、地域資源を活用すべく捉え直し、理想の事業を実現するための実践的研究会。全国より45社の企業幹部が参画中。

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