電力自由化・地域エネルギープロジェクト研究員 村井哲之の実践日記

(第15回)廃棄物の計量を実現することで、廃棄物処理に革命

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電力自由化・地域エネルギー事業プロジェクト研究 第3期研究生の村井 哲之氏が、プロジェクト研究という場を通して「何を学び、何を考え、何を実践し、何を得たか」を書き連ねるスーパーライブコラム。前回は電力小売事業を有意義なものとするため、販売形態と収益構造の解説を行った。今回は廃棄物管理に革新的な発展をもたらすであろう計測システムの紹介と、それがどのように自身のビジネスに活かせるのかについて説明する。

食品スーパーマーケットチェーンにとって「食品リサイクル法」の目的であるリサイクル率のアップを達成する際に課題となっていたのが「廃棄物の適正管理」であり、「管理業務の簡素化」です。

実は私も全く知らないところで、この課題をリアルタイムのクラウドサービスで解決するための公益法人が立ち上げられていました。美しい地球を子どもたちに残すことを目的とした「公益財団法人 Save Earth Foundation(SEF)」です。ここが、廃棄物適正管理支援システム「SEF-Net」なるものをクラウドで実現し、昨年の秋から試験運用をスタートさせていたのです。

この運用も順調に進み、「SEF-Net」に現場で分別された廃棄物の量を正確に計ることができる「電子秤」をセットにしたシステム(名称:計量革命「極」※計量システムもここまできた...極という意味)が世に出る、まさにその瞬間に遭遇することができたのです。10年前の「電気」の“見える化”に続く、「廃棄」の“見える化”との衝撃の出会いでした。

この仕組みを世に出した会社の目指すところは、静脈物流の適正化を通じた効率化だと考えています。一方、発酵系バイオマス発電の最大の課題のひとつは間違いなく、原料たる生ゴミの安定的かつ低コストでの調達です。その最大のポイントは生ゴミの低コスト回収に尽きます。それを阻むものが前回まで解説してきた「廃掃法」上の規制です。現状はそれを変えることはできないため(※)、「食品リサイクル法」の下、進まないリサイクル率のアップを“金科玉条”にした特例処置を使って原料調達及びそのコストの低減を通じて、発酵系バイオマス発電普及の下地を整えていこうと考えていました。

※しかし、今年1月からの一連の食品廃棄物の不正処理の問題で「廃掃法改正」にいよいよ手が付けられます。「廃棄部」の 再定義も含めて大幅な、場合によってはつぎはぎだらけの同法の根本的な改正があると見ています。

もっと言えば、事業構想大学院大学で得た「学び(知)」の成果は、下記のように考えるに至ったことです。
電力販売事業では最終的にはどう足掻いてもBIG10(一般電気事業者たる10大電力会社)には勝てない
⇒地域のエネルギーは地域で創り、地域で消費するビジネスに勝機あり
⇒発電事業としてはバイオマスが最も有望
⇒そのための原料を継続して最適価格で供給するところが一番継続して儲かる

つまり、今回の「廃棄」の“見える化”システムは、私にとっては研究員として学ぶことで最終的に構想した「発酵系バイオマス発電への原料供給事業構想」完成のためのキーポイントだったのです。それを、自社の株主である廃棄物大手の社長につないで頂き、素晴らしい“志”を持ったトップの方に会ってお互いの事業目的とここに至るまでの道のりを話した結果、食品スーパーマーケット業界の隅々までこのシステムを普及させることを託されました。これを回答付きの問題用紙と言わなければ何をもってそう言うか...でした。

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