電力自由化・地域エネルギープロジェクト研究員 村井哲之の実践日記

(第12回)食品スーパーを中心とした循環型エネルギービジネスモデルを構築(2ページ目)

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バイオガス生産プラントで発酵後に残った液肥はそのまま、オーガニックを中心とした野菜を生産するために、食品スーパーが契約をしている農家に提供します。そこで、生産された付加価値(オーガニック等)を持った野菜は店頭で販売されます。食物残渣という、これまではごみ焼却場でお金を払ってただ燃やしていたものが(CO2も出ます)、見事に電気と肥料に生まれ変わり、最後は畑で野菜を育てて再び店頭に戻ってくるのです。"循環型"の美しいビジネスモデルに思えるのは、私だけではないと思います。

こんな話をしていると、都会でバイオガス発電なんて「場所が・・」「匂いが・・」という声も聞こえてきそうですが、鉄道の高架下を思い浮かべてください。発酵プラントや発電機がコンパクトに配置された40フィート(約12m)のコンテナを連ねておくのに丁度いいスペースには思えませんか。

最後は発電した電気を全量、東急電鉄傘下の発電会社に供給。ここで太陽光も含めて全量CO2が出ない電力を調達できれば、大手を振って「グリーン電力」販売を名乗れます。東急沿線の富裕層は、少なくともグリーン電力ではない電力会社と同じ値段であれば100%、場合によっては高くても“クリーン”な電気を買ってくれるでしょう。多少高くてもグリーン電力を購入する層は、マーケターによると2~3%はいるといいます。東京電力管内を3,000万世帯契約として、3,000万×2%=60万人。東急グループを挙げて目指す電力ユーザー50万契約を、この儲かる電気だけで充分満たせるのです。

実現までにはまだ解決しなければならない課題はありますが、実現可能性のある筋の良いビジネスモデルに思えませんか。廃棄物が、物の生産・循環の外にはみ出しません。ほぼ完璧な、それも都会でも実現可能な循環型モデルです!

加えて、ここからは私のオリジナルですが、ここで創られた新たな電気は、福利厚生の一貫で東急グループの食品スーパーや小売りチェーンで働く沿線の従業員の家庭に安く販売します。採用難で新店が出せない中(ある首都圏の大手食品スーパーマーケットチェーンの、年間のパート従業員を中心とした採用人数は6,000人)、人材確保に一役買います。泥臭い話としては近隣の採用で競合する小売店との時給競争に入ってしまうと、後になって経営上の禍根を残しますが、時給が同じなら100%、電気を安く売ってくれるところへパートとしての就職を選択することでしょう。

どうですか?良きビジネスモデルだと思いませんか!裏も表もありません。しかし、このビジネスモデルを成就させる過程にはまだいくつかの越えなければならない壁があります。次回はそのことをお話しします。意外と高い壁です。

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