電力自由化・地域エネルギープロジェクト研究員 村井哲之の実践日記

(第13回)循環型新エネルギービジネスの鍵は「リボーン(再生)」(2ページ目)

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こうした中、「食品リサイクル法」がリサイクル率の更なる改善(アップ)のために改正され、その結果、食品廃棄物によるバイオマス発電所普及に希望の光が見えてきました。

改正のポイントは2つです。ひとつは、「再生利用事業計画書」の中の「再生利用等」の中身に、これまでの肥料・飼料・メタン発酵に加えて、熱回収が追加されたことです。

もうひとつは、これが最も大事なポイントなのですが「再生利用事業計画」の認定に伴う「廃掃法」の特例の拡大です。

端的に言うと、「再生利用事業計画」が認められれば、食品廃棄物を使ってバイオマス発電ができるようになったということであり、さらに、以下の2つの条件を満たす事業計画であれば、何と廃掃法上の収集・運搬事業の許可を取得しなくても(食品廃棄物等の排出施設のある市町村の収集・運搬業の許可なしで)「再生利用事業計画」に従って行う食品廃棄物の収集・運搬が可能となったのです。これは結構大変なことです。

その条件とは、

  1. 「リサイクル・ループ」ができている。
    例えば、スーパーマーケットチェーンなどにおいて、自社の店舗で発生した食品廃棄物を飼料や肥料とし、それを用いて生産した肉や野菜を自社の店舗で販売する仕組みがある。
  2. 収集・運搬を行う者、及び収集・運搬の施設が一定の基準を満たしている。

の2つです。

しかし、日本のスーパーマーケットチェーンの多くは、各店舗への商品の配送は経営の効率化のためにアウトソーシング(物流の外注化)が中心です。また、02の「一定の基準」がくせものであるのと、食品を運ぶトラックで、帰りの便といってもゴミを運んでいいのかという倫理上の問題も出てきます。さらに今は店舗でのゴミの分別は大変なので、また収集・運搬事業者も月にいくらで回収との契約が多いため、生ゴミもビニールも一緒に排出されているという現実があります。

こうした中、都市型バイオマスの実験プラントの建設に入った同期研究員から、東急沿線の系列スーパーから出る食品廃棄物だけではバイオマスの原料としてはとても足らないので、鉄道沿線のスーパーマーケットからもっと多くの食品廃棄物を集めてほしいと、廃棄物処理と食品スーパーに詳しい私に白羽の矢が立ちました。

「どないしよう?」と思っていたところで、またもや“セレンディピティ”に遭遇しました。私の会社の株主が思いもかけない福音をもたらしたのです。

「リデュース」、「リユース」、「リサイクル」に続く、自らが唱えてきた「リボーン(再生/ゴミが電気という新たなエネルギーに生まれ変わる)」という考え方が頭の中の構想から現実化した瞬間でもありました。

これまでやってきた「廃棄」のビジネスと総合エネルギーマネジメントの三本柱のひとつである「創エネ(電気を作る)」が見事に結び付いたのです。それは、食品スーパーマーケットチェーンにはとても理想的なビジネスモデルでした。

事業構想大学院大学 ガス・電力小売・地域エネルギー事業構想
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地域経済と環境に貢献する地域エネルギー事業を構想する。2016年4月の電力小売全面自由化、固定価格買取制度(FIT)を活用した発電事業、地域資源であるバイオマス、風力、水力、太陽光、地熱などを用いた永続的な再生可能エネルギー事業を模索する。自社の経営資源、地域資源を活用すべく捉え直し、理想の事業を実現するための実践的研究会。全国より45社の企業幹部が参画中。

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