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自由化市場における電力販売 ~ ドイツの都市公社の取組みから ~

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平成28年に予定される電力全面自由化に向け、ガスや通信など多様な分野から電力市場への参入表明が相次いでいる。既に電力が全面自由化されて久しいドイツでは、各家庭も電力を選ぶことができる。大手電力会社が大部分のシェアを握っているのかというと、そうではない。各地域の自治体等が出資するシュタットベルケ(都市公社/Stadtwerke)という公的な事業体が約5割のシェアを獲得している。

この都市公社が大手電力会社と戦える秘訣は、(1)総合的なエネルギーサービスの提供、(2)地域に密着したサービスの提供だ。また、都市公社は100%再エネ電力の販売など環境意識の高い需要家を取り込んでいるのも特徴だ。ここでは、昨夏に訪問した3つの都市公社の取組みについて紹介する。

ハンブルクエネルギー公社(Hamburg Energie GmbH)はハンブルク市の出資(※1)により2008年に設立された都市公社で、再エネ開発を行うとともに、電気・ガスの販売を行っている。電力は全て100%再エネ電力を販売しており、8万人の顧客を抱える。

※1 市の100%出資するHamburger Gesellschaft für Vermögens- und Beteiligungsverwaltung mbH(HGV)の100%出資するHamburger Wasserwerke GmbH(HWW)の100%出資により設立

この公社では、電力販売の収益を再エネ開発に回すという循環を意識し、市民への販売電力の50%を自社で開発する方針をとっている。オーストリアやスイスからの水力発電の電力を輸入して100%再エネ電力として販売するのみの事業者が多い中、自社発電で50%はかなり高い割合だ。既に太陽光発電12MW、風力発電13MWなど計32MWの発電容量を所有しているが、今後は、風力発電75MWの建設を予定している。

電力販売とともに、多様なサービスも提供している。例えば、建物のどこから熱が逃げているかをサーモグラフィーで確認し、窓や屋根の断熱工事の提案などを行う省エネ診断を実施している。電力等を購入している顧客は大幅な割引きを受けることができる特典もある。公社とすれば断熱工事や高効率機器の購入につなげることができ、顧客にすれば省エネ化により光熱費が安くなるメリットがある。

また、地域密着の取組みにも積極的だ。ハンブルク地域の広い屋根(30kW以上設置可能なもの)を借り受け、太陽光発電を設置する「屋根借り」事業を行ったり、ハンブルク地域限定で建物ごとに太陽光発電の適性を示す「ソーラー屋根台帳(※2)」を公開するなど、地域での取組みを進める。

※2 ソーラー屋根台帳については、前回紹介。屋根の大きさや角度、日当たり等を航空測量データから分析し、建物ごとに太陽光発電への適性を示すWEBマップ。

左に家屋のサーモグラフィ画像、右にハンブルクのソーラー屋根台帳

左:サーモグラフィーでの省エネ診断(ハンブルクエネルギー公社HPより) 右:ハンブルクエネルギー公社の提供するソーラー屋根台帳(赤、黄、緑の順で太陽光発電に適している屋根を示す)

市民からの資金を集めて地域で再エネを導入する都市公社もある。カールスルーエ市エネルギー・水道公社は、カールスルーエ市を中心に電気・ガス・熱供給・水道を供給する都市公社であり、100%再エネ電力「NatuR」を販売している。「NatuR」の料金は26.30セント/kWhで通常電力に比し、1.2セント/kWh程度割高だが、環境意識の高い需要家はこちらを選ぶという。

この「NatuR」に更に4セント/kWh上乗せした「NatuR plus」を購入すると、この上乗せ分が、カールスルーエ地域の学校への太陽光発電設置や小水力発電の導入に充てられる。地域の再エネ普及を後押ししたい顧客への商品と言える。

また、都市公社が地域の病院等の屋根を借り、市民から資金を集めて太陽光発電を設置し、売電収益で利回りを上乗せして返済するいわゆる市民出資形式の「屋根借り」も行っている。この方法により、これまで23の建物に計約3MWの太陽光発電が設置された。

次ページ →FITの原型となったモデルを実施したアーヘン市の取組み

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