電力自由化・地域エネルギープロジェクト研究員 村井哲之の実践日記

(第16回)廃棄物系バイオマス発電の普及とその課題(2ページ目)

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事業化:欠かせぬ行政(地元)との強い連携

全般

  • 実用化段階で資源を集める仕組みと製造技術が規模の点でマッチングせずうまくいかないケースがある。稲わら、林地残材等の資源調達可能量と技術のマッチングシステムがあれば実用化が早く進む。
  • バイオマスの事業化のためには、入口と出口の政策が重要。企業は政策・制度が整っている地域を選択。環境関連事業は政策でマーケットが生まれている。
  • システムや仕組みが大事であって、ある町でどれくらいの稲わらを集めることができ、どの技術を使えばどの程度の効率・コストが得られるかなど、それぞれの地域に当てはめて考えることが必要である。
  • 技術のほか、原料の収集、販路の確保、利益の出るビジネスモデルをつくるかが課題だが、民間の範疇を超える部分もある。事業化に向けたロードマップをつくり、事業として成り立つような方策を考える必要がある。
  • バイオマスの高付加価値利用は、経済性をよくするためには大事な取り組みである。

バイオマス事業の普及のためには、

  1. 施設整備への支援(採算性の低い小規模事業への補助率の拡大、利用者側の施設整備への補助、所管省庁を横断する施設への補助(廃棄物・下水、農業集落排水等)
  2. 安定した事業収入の確保(廃棄物系を含むバイオマスへのFIT買取りの対象化、熱利用へのインセンティブの拡大、CO2削減の買取り、汚泥燃料のJIS規格化、「廃掃法」上の有価物指定条件の緩和)等が課題である。

個別バイオマス

都市部での生ごみは発生抑制を行いつつ、分別や需給のマッチングの課題があるため、堆肥化・飼料化が難しいものはバイオガス化によってリサイクルを進めるべきである。これにより、残ったごみのカロリーが増加し、焼却処理での熱回収率(発電効率)が向上する。

具体的な展開方向と課題は、

  1. 自治体の焼却施設の更新時に大規模なバイオガス化施設を併設
    (課題:循環型社会形成推進法交付金の存続)
  2. 民間事業者による大規模なバイオガス化施設の設置
    (課題:FIT創設で廃止された民間設備への助成復活)
  3. 排出事業所でのオンサイトの小規模バイオガス化施設の設置(課題:小規模施設のコスト低減・コンパクト化技術の開発、民間発電施設への助成復活、設置事業所への生ごみの持込みに関する「廃掃法」の特例)

農林水産省「バイオマス事業化戦略検討チーム」の会合資料参照

これで皆さんへの、この半年間における事業構想大学院大学 電力自由化・地域エネルギープロジェクトの第3期研究員としての『学び』の成果は伝え切った気がしています。

次回からの2回で、大学院でプロジェクトの研究員になるもうひとつの価値である、研究員同士の『交わり』の成果をお話しします。

それはこれまでに経験したことのない“セレンディピティ(ふとした偶然をきっかけに幸運をつかみとる)”の連続でした。ノーベル賞を取った方々が皆さん口にする、壁にあたり、考えて、考えて、考え尽くした時にふと出会うこの瞬間をたくさん経験できて...。信じられません。学ぶこと、考え抜くこと、そしてすぐに行動を起こすことの大事さを改めて強く感じました。

事業構想大学院大学 ガス・電力小売・地域エネルギー事業構想
~地域でエネルギー事業を興すプロジェクト研究~
研究員募集中(4月開始)
地域経済と環境に貢献する地域エネルギー事業を構想する。2016年4月の電力小売全面自由化、固定価格買取制度(FIT)を活用した発電事業、地域資源であるバイオマス、風力、水力、太陽光、地熱などを用いた永続的な再生可能エネルギー事業を模索する。自社の経営資源、地域資源を活用すべく捉え直し、理想の事業を実現するための実践的研究会。全国より45社の企業幹部が参画中。

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