電力自由化・地域エネルギープロジェクト研究員 村井哲之の実践日記

(第17回)研究員の垣根を越えて新しいビジネスを創出(3ページ目)

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もうひとつ、彼の創り上げたこの仕組みが本当に確かなものであることを確信したのは、元々、『見える化』の仕組みを前職の会社から導入したものの、経営トップの方針がコスト削減から売上げの大幅アップに突然変わり、節電の成果が全く出なくなった前述の中国地方の大手ドラッグストアーチェーンに後から入りこみ15%もの電気使用量の削減を実現していたことがあります。

それから、一番驚き、また、腑に落ちたのが、彼がお客様のことを「節電所」と呼んでいたことと、自分はリスクを取って「節電所」(=お客様の施設とそこで働く従業員の意識)に投資をして、削減成果の半分と言うい収益(利回り)を稼いでいるんですと言ったことです。彼にとっては「発電所」へ投資をすることと同じだったのです。

つまり、100店舗を展開するスーパーがお客様になってくれると、完全成果報酬ですから初期の『見える化』システムは同社で仕入れて設置工事をしなくてはなりません。1箇所への投資金額が20万円とすると2,000万円の投資が必要となります。これを銀行から借りるためには、そこから得られる利益、つまり利回りの計算が必要となります。太陽光発電所が常にその利回りで売買されえたりするのと同じことで、「節電所」も無駄な電気を使わないことで新たな電気を産み出すと言う意味では大きく言うと「発電所」のひとつです。彼からしてみれば利回りが良いし確実に見込めるからお客様を取りに行く=つまりお客様の敷地内の店舗に「節電所」を創りに行く感覚でした。

そんな決断力、そして、リーダーシップを持った社長から、授業終了後、3期生の前で、「僕は村井さんの本を沢山読んで今のビジネスに行きつ着き、儲けました」「村井さんは意外にエネマネ業界では凄い人なんですよ!」と言われ、正直嬉しかったことを覚えています。

その後、社長とは上京の度に色々と話をさせて頂き、彼の“日本全国「節電所」建設1,000箇所計画”に、「省」「創」「蓄」の総合エネルギーマネジメントNO1.になることを標榜している私として、全面的に協力をすることを約束しました。また、彼からは、エネルギーマネジメント分野における事業構想構築予定企業のコンサルティングファームになることを目的に設立される一般社団法人の事務局長への就任を打診され、受けることになりました。

ここは立ちがる前から、既に、60Mの洋上風力発電(三重県)、50Mのバイオマス発電(宮崎県)、PKS事業の立上げ支援の話が具体的に来ています。そして、最後の大きな出会いが自社の最大の株主からもたらされました。最大の『セレンディピティ』です。あと、1~2回続きます。

事業構想大学院大学 ガス・電力小売・地域エネルギー事業構想
~地域でエネルギー事業を興すプロジェクト研究~
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地域経済と環境に貢献する地域エネルギー事業を構想する。2016年4月の電力小売全面自由化、固定価格買取制度(FIT)を活用した発電事業、地域資源であるバイオマス、風力、水力、太陽光、地熱などを用いた永続的な再生可能エネルギー事業を模索する。自社の経営資源、地域資源を活用すべく捉え直し、理想の事業を実現するための実践的研究会。全国より45社の企業幹部が参画中。

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