電力自由化・地域エネルギープロジェクト研究員 村井哲之の実践日記

(第19回)木質バイオマス発電とPKS(油ヤシ殻)発電(3ページ目)

  • 印刷
  • 共有

これ以上は詳しくは書きたくないのですが(笑)、このビジネスネスモデルを投資家から資金を募りインドネシアで実現し(数基のPKSバイオマス発電所を建設し)、その収益を持って仲間で1基バイオマス発電所を現地に建設することが出来ると確信するに至ったポイントを列記しておきます。

  1. PKS現地原料仕入れ価格(加工前)2,000円/トン、日本販売価格14,000円/トン(現状)
  2. 現地GDP日本の1/6、一方、電気代の価格は30%安いだけ。バイオマス発電国営電力会社買取り価格11.2円/kWh(not FIT/電気足らない)
  3. メンテナンス要員の現地養成で、発電所プラントのパーツごとに最も効率的な設備機器の調達(中古を含む)が出来る
  4. インドネシア政府の積極的な外資導入政策。投資資金10億円の確保or地元での雇用の創出の条件を満たせば、バイオマス発電所の建設・運営に関して必要な13省庁の認可印を3時間で全て押す。貿易に関するネガティブリストの大幅改善
  5. 発電の副産物の「水」も不足、商品価値がある(日本ではコストとなる)
  6. PKSの代替燃料を確保(価格上昇の歯止め)
  7. PKSの効率的・安定的な確保、また、それを妨げる山賊対策のための生活協同組合の組織化の手法の発見
  8. 現地での総合バイオマス燃料(PSK、籾殻、ペレット等)生産・供給事業の同時展開が可能

実は、少しボカして書きましたが、木質バイオマス発電を計画することと比べるとリスクは少ないです。日本で木質バイオマス発電を継続的に行っていくためには、燃料の効率的・安定的な確保が必要です。現在、バイオマス燃料の安定供給について、市町村や森林組合への接近・連携を試みるも苦労を重ねている方々には、かなり強い興味を持って貰える話です。

なぜなら、規模が大きくなればなるほど彼らの計画には必ずPKSでの燃料調達が視野に入っている一方で、年々の価格上昇、また、そうした足元を見た詐欺的なPKS供給話が増えている現状があるからです。

因みに、PKSの世界一の潜在的な産地(油ヤシの産地がそうであることからの推測)は、その1/3を締めるインドネシアで、潜在バイオマス発電量は1,250MW。一方、最後には燃料としてPKSを当てにしている日本の木質バイオマス発電所は計画を含めて100基1,446MWもあります。インドネシアのPKS全てを持って来ても日本の総需要は満たせないと言う現実があります。

こうした中、インドネシア政府は向こう2年間、PKSに掛ける輸出の関税を下げる政策を取るものの、先を少し見ることが出来るようになった私の目からは、これにより国内における効率的な収集・加工・運搬の仕組みを実現した3年目以降は、「自国消費」と言っているようにしか映りません。インドネシアも言うまでもなく「COP21(パリ会議)」の締約国です。CO2の出ない電気を創り出すことが出来る燃焼効率の良いバイオマス燃料をワザワザ手放して、日本の生産性向上とCO2削減に貢献し続けようとするはずがありません。また、海外からPKSを輸入して(運ぶ船が出すCO2は大変な量です)燃やす。何が、エネルギーの地産地消なのでしょうか?!アジアの規模でなぜ見ることが出来ないのでしょうか?!見えないのでしょうか?!

いよいよ次週は最終回です。とうとう、多くの方々の支援を得て、新たなエネルギーマネジメント会社を立ち上げるに至った経緯とその目的と戦略、そして、これこそが最終的な研究員としての私の事業構想になり、残り3ケ月の研究員生活の中で売上げの実績を作ると言う卒論の仕上げのステージに来ていることをお話しします。

事業構想大学院大学 ガス・電力小売・地域エネルギー事業構想
~地域でエネルギー事業を興すプロジェクト研究~
研究員募集中(4月開始)
地域経済と環境に貢献する地域エネルギー事業を構想する。2016年4月の電力小売全面自由化、固定価格買取制度(FIT)を活用した発電事業、地域資源であるバイオマス、風力、水力、太陽光、地熱などを用いた永続的な再生可能エネルギー事業を模索する。自社の経営資源、地域資源を活用すべく捉え直し、理想の事業を実現するための実践的研究会。全国より45社の企業幹部が参画中。

       

関連記事